漫画少年廃刊から数か月…。
ひとまず僕は製薬会社に就職していた。
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30 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:16:37
ID:BdX2Wivc ┌──────────────────────────────────────┐
│ 赤塚から連絡があったのはそんな時である。 │
└──────────────────────────────────────┘
／￣￣＼
／ _,ノ ｀⌒
｜ ( ●) (●）
｜ （___人__） よぉ 元気かやる夫？
| ﾉ
i | なぁ、そろそろ漫画少年の事は忘れて
_.. ｨヽ、 、___ | 次の一歩を踏み出そうぜ
, ￢;;-ｰ=≦} : ヽ 丶__ ___r-´
/ : :ヽ : : : : : : :| : : :＼ ｲ::::ﾄlヽ
/ : : : : : :ヽ : : : :ﾉ : : : : : v' l:::::l､ :l＞､、
: : : : : : : : : : : : : : ＼ : : : ｀､ :::::l, :l : : : : :ヽ.
: : : : : : : : :l : : : : : : : : :､ : :｀､::::::ｌ : : : : :l : :l
: : : : : : : : l : : : : : : : : : :｀､ : ｀､::,' : : : : :l: : :l
: : : : : : ｲ´ : : : : : : : : : : : :`､ : V : : : : : :| : :ﾄ
赤塚やらない夫
（赤塚不二夫）
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ へぇ～ 漫画研究会ってパーティーで
／ （●） （●） ＼ 横田徳男さんって方と会食ですかお。
| （__人__） |
/ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | | はい、僕も出席するお。
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
長谷やる夫
31 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:17:46
ID:BdX2Wivc パーティーは大正漫画の復権をテーマにしたもので僕には退屈なものだった。
だが横田徳男というのは赤塚がひどく気に入って話に花が咲いた。
(ヽ三/) ））
( i)))
／￣￣＼ ＼
／ _ノ ＼ ） いやぁ～、横田君のマンガは面白いねぇ
| （ ＞）（＜）
. | ///（__人__）
| ｀ ⌒´ﾉ 君も僕と同じく田舎から上京してきたの？
. | } 田舎の笑いっていうのが本当に上手いよ。
. ヽ }
ヽ ノ
⊂ヽ γ く
i !ｌ ノ ﾉ |
⊂ｃノ´| ｜
,.⌒ヽ γ⌒ ヽ
〈● ﾉ＼ ／＼ ●〉
ヽ彡' ヽ / ヾ_ノ いや、僕の漫画なんか
） Y （ そんなに褒めるものじゃないですよ。
／γ⌒ ⌒ヽ＼
/ | | ヽ 僕なんか漫画界の底辺ですし…。
| ヽ＿＿人＿＿ノ |
＼ `ー'´ ／
横田徳男
32 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:20:20
ID:BdX2Wivc (ヽ三/) ））
( i)))
／￣￣＼ ＼
／ _ノ ＼ ）
| （ ＞）（＜）
. | ///（__人__）
| ｀ ⌒´ﾉ またまた謙遜しちゃって。
. | } キミはやる夫なんかよりずっとウマいんだから。
. ヽ }
ヽ ノ
⊂ヽ γ く
i !ｌ ノ ﾉ |
⊂ｃノ´| ｜
／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼ あの…
／ （●） （●） ＼
| （__人__） u | 僕、あんたの隣にいるんですけど……
＼ ｀ ⌒´. ／
／ ＼
33 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:22:52
ID:BdX2Wivc ┌──────────────────────────────────────┐
│ その後、赤塚と横田は僕を驚かす行動に出る。 │
│ ２人ともそれぞれ勤めていた会社を辞め、漫画家を専業にしたのだ。 │
│ 赤塚も横田も、まだ連載を持っていないにもかかわらず、である。 │
└──────────────────────────────────────┘
（
／￣￣＼ )
／ ⌒ ⌒ ＼ (,,
| （ ●） （●） | .ｌ;ｌ 見てくれよ、俺たちの仕事場。
. | （__人__） | ＿,_,|,|_, ５畳半の共同会社ってやつよ。
| ｀ ⌒´ |, ト-=y 丶
. | } ヽ `ｉ,￣‐^ｌ 横田君がここでやろうっていって即決しちゃった。
. ヽ } ヾ~ ` ｉ,
ヽ ノ _ ヽ、 ;ｉ,
,,＿,ｉ y,ｿﾄ,,__ ヽ、 ;ｉ,
,/r-'"j ／ ／ ｉｉ, `ヽ､-x,,゜r ;ｉ
,,／'/__.L、 ／ヾ、"ｉ `ヽ `;ｉ ｉ,
＿＿＿_
. ／ ─ ─＼
. ／ （●） (●）＼ まあ、あんた等がいいなら、それでいいけど……
. ／ （__人__） ＼ これからの生活はどうするんだお？
. | u ｀ ⌒´ |
＼ ／
. ノ ＼
／´ ヽ カ
| ｌ l||l 从人 l||l l||l 从人 l||l カ タ
ヽ -一''''''"~~｀`'ー--､ -一'''''''ー-､. タ
ヽ ＿＿＿＿(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒＿(⌒)⌒)⌒))
┌ ┌┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐
,. - ''"|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ρ￣`ｌ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ノ￣
34 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:26:26
ID:BdX2Wivc ,.⌒ヽ γ⌒ ヽ
〈● ﾉ＼ ／＼ ●〉 貸本出版社への売り込みが成功したんだ。
ヽ彡' ヽ / ヾ_ノ 俺が日昭館で、赤塚は曙出版。
. ） Y （
／γ⌒ ⌒ヽ＼ 自炊の方は俺、得意だから大丈夫さ。
. / | | ヽ
. | ヽ＿＿人＿＿ノ |
＼ `ー'´ ／ ＼
/ く ＼ ＼
| ＼ ＼ ＼
| |ヽ、二⌒)､ ＼
＿＿＿
／）／ノ ' ヽ､＼
／ .ｲ '（●） .（●）＼ え、決まったのかぁ
. /,'才.ﾐ). （__人__） ＼ いいなぁ。
. | ≧ｼ' ´ ⌒｀ |
. ＼ ヽ ／ 羨ましいお
35 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:28:39
ID:BdX2Wivc ／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__）
. | ﾉ うーん、それがねぇ…
| ∩ ノ ⊃ ギャグ持ち込んだら断られ
／ .／ ＿ノ 少女漫画描けって言われたよ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
━┓
┏┛ ⌒
・ ＿＿_⌒
／ ― 乂＿＿＿_ ━┓
／ノ (●／ ― ＼ ┏┛ ギャグと少女漫画なんて正反対のジャンルだお
. ｜ (●) | (●) ヽ＼ ・
. ｜ （__ﾉl （⌒ (●) | 一体どういうことだお？
. │ 〉 ￣ヽ__） |
＼＿＿／´ _＿_／
/| ヽ
| | |
36 ：
名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:31:16
ID:BdX2Wivc ┌──────────────────────────────────────┐
│ 赤塚の話はこうだ。貸本会社の社長は、日本酒の一升瓶だけ持って │
│ 上京し、大八車を引いて本を売り財をなした。 │
│ . │
│ だが若い時の寂しさもあってか、ついつい上京し１人で頑張っている . . │
│ 若者をみると放っておけないらしい。 │
└──────────────────────────────────────┘
| ＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ＿_ ＿＿＿______＿＿＿______＿＿＿ ::. .: :. :..|: .: ..: .: .: . :..
ｌ |「￣￣￣￣|￣￣￣|￣| l __ | |iﾟ ＿ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_|＿___ . | : . :. .: .:.:.:.: .:. :.
ｉ |l 「￣￣ l ! .ｉｌ `| |.こ'| |ｌ |┌────────────┐| | |＼:. :. ::..: .: .: .:.
/〉 . | |ｌ L ＿ 」 .| |i . ｌ | lil | |ｉ |│～～～ OO→ノ⌒v´｀ー‐ │| | | l＼ :.: .: .. :. :.:.
. //.! .| |l | |＼ｌ |(:::)| |i｡ |│～～～ .i' n_＿Ω_,←│| | | l | :. :. :. :.: .
〈//i| .| |ｌ 「| ｌ | ,.二、 .￣|│「ﾟ ﾟ」同 .ＸＸ→ﾉ_ノ＿,.-‐' ´ . │| | | l | : .: .:.:.:. :. .
li.!/l ! |ｌ l_| | | |,ｪｮ'! .. |└────────────┘| |. .: .:＼l | : .: . :.:.:. :. .:
iｌ ゝ . |l | | | lli'tl:| ￣￣「| ￣￣￣￣ ￣ ￣￣「|￣ ￣ .:..:.::|: .: . :.: .＼| : ..: .: .:. . :.
l!v´ ｌ ,､--､ | ｌ | l,lLl.| |.|================|.| .: .:.:.:.:.::|. :. :. . :.: . :. |＼: .: .:. :. .
く> |_l ￣ l＿ ＿＿_.|＿ ＿_ _＼| ￣ .|;| ... ..|;| :. :._:._.:.:_.:_|: .: .: .: .: : .: | l＼ :.. .:
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37 ：名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:33:26 ID:BdX2Wivc
,.⌒ヽ γ⌒ ヽ ）)
(（〈● ﾉ＼ ／＼ ●〉 そうそう、それでね、やる夫ちゃん。
ヽ彡' ヽ / ヾ_ノ
） Y （ 社長にやる夫君のこと言ったら
γ⌒γ⌒ ⌒ヽ⌒ヽ そいつも面倒みていいって言われたんだよ。
(（ | | | .|
(（ ヽ ヽ＿＿人＿＿ノ .ノ どう？
＼ . `ー'´ ／ 貸本やってみない？
＿＿＿
／ ⌒ ⌒＼
／ （○） （○） ＼ 本当かお！
／ ///（__人__）/// ＼ 横ちゃん最高だお！
| u. `Y⌒y'´ | 是非やらしていただくお！
＼ ゛ー ′ ,／
/ ー‐ ィ
38 ：名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:36:12 ID:BdX2Wivc
それから間もなく、僕は件の曙出版に出向いた。
僕が探偵小説を描きたいと言ったら、社長も二つ返事で
快諾してくれたので、事前協議もすんなり決まったのだ。
＿＿＿_
／⌒ ⌒＼
／（ ー） （ー） ＼
／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼ えーこんにちは。
| |r┬-| | 長谷やる夫だお。
＼ `ー'´ ／
r´､＿__∩∩＿_, /
＼＿_ ´人 ｀ ＿ﾉ 取り合えず下書き終わったので見てくださいお
ヽ ￣ ￣ |
｜ /
| ｒ /
ヽ ヽ／
>__ノ;:::......
_,,. -─-...､
／ :::::::::::::::::::::::::::＼
i::::::r:～''`''"ﾞ`'ｰ'ヽ;:::ﾞl
|::::j": : : ヽ::|
_Ｖ: :,.ﾆﾆ=､ ｰﾆﾆ'_ !l
. ｆr`i-{.: :-ｰ:_l-{_:‐- .H∩
!f_|: :`ー‐ ｿ: ヾ;ｰ‐ ' !'ﾘ . お前が赤塚の言ってたやる夫か。
,ゞl.: : : r‘ｰ-‐ヘ F:ｰ-.､ よし、いまどれぐらい出来てる？
/ :::::l:､: . ､ﾋ:＝=ｰ.､ /::::::::::::::＼
. ! :::::::::i:::ヽ: : ￣´, イl:::::::::::;∠_´ １１月までに原稿が上がれば
_rl ::::::::::::ヽ::､:_｀二´／ l::l::::／:::::::::::＼ 正月に出せて、助かるんだがな。
,.-‐':::└──-:､＼./:＾＼. ,'::::l:::＼::::::::::::::::ヽ
39 ：名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:37:46 ID:BdX2Wivc
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ ちょっと難しいですお。
／ （●） （●） ＼ 僕、一日２、３頁しか出来ないので
| u （__人__） | 年内まで待っていただけないでしょうか？
＼ ｀ ⌒´ ／
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､.
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
_,,. -─-...､
／ :::::::::::::::::::::::::::＼
i::::::r:～''`''"ﾞ`'ｰ'ヽ;:::ﾞl
|::::j": : : ヽ::| キミ、この世界で成功しようと思ったら
_Ｖ: :,.ﾆﾆ=､ ｰﾆﾆ'_ !l その倍はやらんといかんぞ。
. ｆr`i-{.: :-ｰ:_l-{_:‐- .H∩
!f_|: :`ー‐ ｿ: ヾ;ｰ‐ ' !'ﾘ まあでも、キミはこの近辺に住んでるよう
,ゞl.: : : r‘ｰ-‐ヘ F:ｰ-.､ だから、また持ってきなさい。
/ :::::l:､: . ､ﾋ:＝=ｰ.､ /::::::::::::::＼
. ! :::::::::i:::ヽ: : ￣´, イl:::::::::::;∠_´
_rl ::::::::::::ヽ::､:_｀二´／ l::l::::／:::::::::::＼
,.-‐':::└──-:､＼./:＾＼. ,'::::l:::＼::::::::::::::::ヽ
40 ：名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:39:02 ID:BdX2Wivc
┌──────────────────────────────────────┐
│ そう言い終わると、社長はそそくさと別の仕事に取り掛かった。 │
│ 最初の仕事は拍子抜けするほど簡易なものであった。 │
└──────────────────────────────────────┘
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ まっ、仕事なんてどれもそんなもんだお。
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
41 ：名無しのやる夫だおだお：2011/11/16(水) 03:43:51 ID:BdX2Wivc
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○○ ●● iiiii iii ii iiii ●● ○○
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（ ）（ ）（, ）（,, ） ,,）（ ）（ ）（, ）（, ;）
余談だが、この年は手塚治虫と共に漫画界の帝王として
君臨していた福井英一が亡くなっている。
わずか３３歳の死。それはあまりにも短い生涯であった。
そして彼は亡くなる間際まで漫画を描き続けていた。
そこまで人間をのめり込ませる魅力が漫画にあったからだ。
第３話 終
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