┌────────┐
│. 放課後 教室 ....│
└────────┘
ヽ|ノ . .::| || || | : :
__(__)_________| || || | : :
\| || / || ,i : :
 ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄||. \. // ,|i〕 | : :
==||====||=〔 ̄ ̄ ̄〕||====|| \. || ,| :: ::
\||__\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\,||. \ || i :: :::
\ ||\______\ \,|| | ::: .:::
 ̄||. ||\|| :=: || ̄ \ | ::: ::::
 ̄||: || || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| \ ノ .:::: :::::
|| || ||.. \ ゙^ヽ, .:::::::
____
/ \
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚((●)) ((●))゚o \
| (__人__) | 終わらない……終わらない……
\ ` ⌒´ /
/´ `\ 課題が終わらないお……
/ / l l .___
__l l_¶______/_/__/ ヽ
\, ´-'ヽ  ̄| ̄ ̄ ̄ ̄| l二二二二l
ヾ_ノ | '''' ' | l二二二二l
|. | '''..-- | l二二二二l:::..
| ..'' | ''-. ,|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:02:21.68
ID:Kzmf5l4s0 ____ ,
/ \ -
/ ⌒ ⌒\` やる夫くん まだ教室に残っていたのですか
/ ( ●) (●) \
| ___´___ | 一緒に帰りましょう
ヽ、 `ー '´ /
____
/ \
/ _ノ ヽ、_ \ そうしたいのはやまやまだけど無理だお
/ o゚((●)) ((●))゚o \
| (__人__)' | 課題が終わるまで居残りなんだお……
\ `⌒´ /
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:05:07.99
ID:Kzmf5l4s0 ____
/ \
/ _,ノ \ \ それは残念です 何の課題ですか?
/ (●) (●) \
| ' |
\ ⌒ /
____
/ \ 日本の作家についてのレポートだお
/ _ノ ヽ、_ \
/ /⌒) ⌒゚o \ 簡単なのでいいって先生は言ってたけど
| / /(__人__) | そもそもやる夫は本なんて読まないから
\/ / ` ⌒´ / 誰について何を書けばいいのかわからないお
____
/ \
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚⌒ ⌒゚o \ 一体どうしたらいいんだお……
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:07:48.73
ID:Kzmf5l4s0 |┃ /.:.:. \
ガラッ. |┃ /:,:.:.: / ヽ \
|┃ /.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
|┃三 /!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
|┃ /イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
|┃ N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j 話は聞かせてもらった
|┃三 ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
|┃三 `ヘ:ゝ .' 小/ そういう事なら私に手伝わせて欲しい
|┃ ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
|┃ _, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 及ばずながら力になる
|┃ /| l:| | ===| |:l゙ヽ
___
/ ⌒ ⌒\ __
/ (⌒) (⌒) \〈〈〈 ヽ それはありがたい、助かるお
/ ///(__人__)/// 〈⊃ }
| u. `Y⌒y'´ | | 有希ちゃんが手伝ってくれるのなら百人力だお!
\ ゙ー ′ ,/ !
/⌒ヽ ー‐ ィ l
____ ,
/ \ -
/ ⌒ ⌒\` 長門さんの課外授業ですか ちょっと興味ありますね
/ ( ●) (●) \
| ___´___ | 誰を扱うのですか?
ヽ、 /
5 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:11:37.76
ID:Kzmf5l4s0 ___
. ´ `丶
.イ ヽ
/ '.
ノイ / , i '. i
_,. .-‐Ⅵf.イ}/j∧ハ:i ハ{ それは独断で選ばせてもらう
.イ:: f 从ィ芒 , 芒从/
. _,. イ::::::i::::∨ ト . - r个j`ヽ 本日紹介するのはこちら
. r<::::::::::::::::l::::::∨ ! 厂 :/.j::::ハ
{::::::::: `:::::::::j:::::::::ヾ | リ / /:::::::i
ヽ::::::::::::f⌒ '7:::::::::\ { / /. イ::::::::::l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_,.-‐:::::::::::-.、
,..r:::::::::::::::::_::::_:::::::::ヽ_
i´:::_;::-‐:::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
_, r:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
::::::::::::::::::::_;:: -‐  ̄ ̄ ‐::::::::/
::::::::::::::ィ'´ ''"´ ;' ""'::::lr'
::::::::r':::::i rtj-、 ::rヘナヽ::!
`Y''ヽl ::::. .::::!
ヽ ',.、__;ノ ィ::l 夢野久作(ゆめの きゅうさく、1889年1月4日 - 1936年3月11日)
ヽ.ィ :._:::::::..::l
l. 、´--r、:::/
イ 、 `ー:'\ 、 日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家
i、 \ ´:::;:/ \ 、 本名は、杉山 泰道 福岡県福岡市出身
ヽ "'''フー'j \\ 父は、玄洋社系の国家主義者の大物、杉山茂丸
.ヽ .::/ \.\
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
8 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:13:27.00 ID:fPGb4zh40
一応ドグラマグラは読んだ 9 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:14:42.35 ID:9OgbRRnyP
死後の恋が好きです 10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:15:08.11
ID:Kzmf5l4s0 ____ ____
/ \ / \
/ ─ ─\ /─ ─ \
/ (●) (●) \ / (●) (●) \ 夢野久作……
| ___'___ | 夢野久作ですか | (__人__) |
/ ∩ノ ⊃ / \ ⊂ ヽ∩ < 三大奇書と言われた
( \ / _ノ | | ちょっとマニアックですね | | '、_ \ / )
.\ " /__| | | |__\ “ / あのドグラ・マグラの作者かお
\ /___ / \ ___\_/
, -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ 夢野久作の生涯を簡単においつつ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 様々なエピソードから彼の背景にあったものを見ていきたいと思う
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
12 :122:2010/03/27(土) 22:18:51.77
ID:Kzmf5l4s0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
__
/ノ ヽ\
| > < | 明治23年1月4日 杉山茂丸・ホトリ夫妻に長男誕生
|⊃(_,、_,)⊂| オギャー
| } 直樹と命名された彼こそがのちの夢野久作
( ^ )_( ^ )
/ / ヽ ヽ ←杉山直樹
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/, | /:: , l:: i::. }::ヽヽ::.ヽ \
.// .:! :| : /:::/:/::/i: /: !: }i:',ヽ:|
i,i .::| :|: :: !,/_ム/_ l:/::: l:: !l::! i::!
. ! l .: : .::::| :i:.:: レ',ソ,_/`!::/i:/ i:! |
. !.:! ::. : .:.::/´', !::: | ! ヾ.i´:i` !/ / !
i:l', :::::. :. ::. ::〈 、'_゙il::::. |.| j_ソ ゙、_
ヽヽ、:::::::::. :::.::::\ニ',::. ii::! ノ
ヾ、i::::l::::l::::',:| ',::. !',! ィ´
i|ヾ:!:::i::::/ヽ ヽ. l 丶. / ……ここでまず夢野久作の実家杉山家に注目したい
ノ /ii/lノ ヽ:r‐y┬ '
イ'"`'‐- 、 / ヽl/ ' 杉山家の先祖はかの戦国大名龍造寺隆信
/ \__{ヽ、
/_,, -‐‐‐-- ,,_ \_,ヽ‐、
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:22:22.74 ID:AOrdofQg0
これは気になる 15 :121:2010/03/27(土) 22:22:34.95
ID:Kzmf5l4s0 ____ ___
/ \ / \
/ ─ ─\ /─ ─ \ 九州の北西部を支配していた
/ (●) (●) \ / (●) (●) \
| (__人__) | りゅーぞーじ? | __´___ | 戦国大名ですね
/ ∩ノ ⊃ / \ `ー'´ /
( \ / _ノ | | ノ \
____ ___
/ \ / \
/ ─ ─ \ /─ ─ \ いやそれは……
/ (●) (●) \ ああ
コレにでてた / (●) (●) \
| (__人__) | アレかお | __´___ U | ある意味あってるけど……
\ `⌒´ ,/ \ `ー'´ /
/ ー‐ \ ノ \
16 :120:2010/03/27(土) 22:25:27.84
ID:Kzmf5l4s0 / / `ヽ
/ ,' \
/ ! / / , , } ヽ ヽ
,' │ {, 'i ィレ'レ| ハ ハ ! ハ
,イ | |‐‐‐-、 レ' _ム__!_i/ ! } 家臣によって龍造寺家が滅ぼされた後
~ レ、 i ,ィ≠、 ___ }ノノ}ノ 隆信の孫、誠隆(のぶたか)が黒田長政の家臣となった
N,ヘ V:rソ {!::jテ//
` レヽ ! ̄ ' └' //
`ヘ |>、 ‐ , イ/ 彼が豪商杉山意休の娘と結婚して以後、杉山姓を名乗るようになったという
,∨- ≧ー≦´W
,<ヾ、 \ニミ! `¨ヽ
┌─────────┐┌─────────┐┌─────────┐┌─────────────┐
│龍造寺家 .││龍造寺の生き残り ││龍造寺誠隆 ││誠隆、杉山意休の娘と結婚 .│
│家臣に滅ぼされる.. ..││筑後に逃げ延びる. ..││黒田長政の家臣に.. ││以後杉山姓を名乗る .│
└─────────┘└─────────┘└─────────┘└─────────────┘
> > >
17 :119:2010/03/27(土) 22:28:50.01
ID:Kzmf5l4s0 _,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| | 杉山家はお伽衆として、代々藩主黒田公の傍近くに仕えていった
〃 l lュ} ', -、.V/ / |
. l| l ' 5iツ ノ ハ|
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
. {|_」 | ,L. -¬リ
____
____ / \
/ \ /─ ─ \
/ ─ ─\ /(●) (●) \ 主君に近侍して
/ (●) (●) \ お伽衆? | __´__ |
| (__人__) | \_ `ー'´ _/ 話し相手などを務めた役
/ ∩ノ ⊃ / それはなんなんだお? ⊂ ヽ∩ / \
( \ / _ノ | | '、_ \| | だったとおもいます
.\ " /__| | \ \ / /
\ /___ /
21 :118:2010/03/27(土) 22:32:09.78
ID:Kzmf5l4s0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ 一言に話し相手といってもその話題は多岐に渡る
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 詩歌や武功譚、世辞譚、伝説、昔話、艶笑譚等
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ 幅広い話題に通じている必要があった
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
,,―'''―,,
, ノ 、 \ ● /
/ ● ●) ヽ ∧_∧ ∩
// (人__) ノ ∧_∧ ( ´∀`)丿
‐======{l⊂二 ヽ ( ´∀`)||. ⊂ 丿
_/ ⊂ノ (≡V/_~つ | | |
(_ノ  ̄ヽ_) (__Y__) (__)_)
┌─────────────────────────┐
. │ それ以外にも武芸や学問、趣味の相手 ....│
│ .....│
│ 能楽のお手直しという事までその役目に含まれていた │
└─────────────────────────┘
23 :117:2010/03/27(土) 22:36:45.78
ID:Kzmf5l4s0 ____ ____
/ \ / \
/ ─ ─\ /─ ─ \
/ (●) (●) \ / (●) (●) U \ やる夫にゃ絶対
| ___'___ | 武芸、学問、芸事、豊富な話題… | (__人__) | ムリだお……
/ ∩ノ ⊃ / \ ⊂ ヽ∩ <
( \ / _ノ | | 多様な方面に通じてなくてはならない役 | | '、_ \ / )
.\ " /__| | | |__\ “ /
\ /___ / というわけですか \ ___\_/
_
_,..-'⌒ ' ̄` ‐ 、
/ / .: ::. ::::::::..ヽ
_,/ ハ ::..ヽ::::::::.ヽ
 ̄フ / { 人 ト、 :::::l:::::::::::ヘ
| l l i八iゝ、 l ヽト |:::|i::ゝ
{ハ| { i__レ__ゝ ヽj __j_Vl ::::::!::レト
| ノ ト{ ィfァッ ィfテ、i::::::|/:/
\ ヘ{ iトi. 辷ソ . 辷ノ|::::/ヘ{
{ミi⌒f.} i ト、 _ ノi::/ 杉山家のそうした血脈は作家夢野久作の
─ {ニ} o } 〉 !ト! ゝ、 .._ ,.. ィ'´ j!
ヽ`´ノ _,-─ '´/ {\ 注目すべき背景の一つ 要チェック
| `‐´} /i || レニ二ニi ` ̄/ヽ
}:::::::lr´::::::i !! !====! //::|
/:::::::::ト、:::::::::i || i i //::::::i
{::::::::::::::::〉、::i i ll i i //::/:::::i
i___,ヘ::i i ヾ i m / //::/:::::::::i
24 :116:2010/03/27(土) 22:39:36.36
ID:Kzmf5l4s0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ 次に家族について
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 杉山直樹の祖父は他家から婿養子にやってきた人物だが
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 彼は藩校の先生をしており漢学に通じていた
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌────────────────────┐
/ ̄ ̄\ │杉山直樹(夢野久作)は幼少期からこの祖父に . |
/ _ノ三\ │ │
| ==( ◎)-(◎) │四書五経を仕込まれていたという │
| (((__人__) __ └────────────────────┘
. | ノ / ─ \
| ∩ ノ ⊃ . ● ● |
/ ./ _ノ (_,、_,) ⊂⊃|
(. \ / ./_ノ │ { |
\ “ /___| | ヽ /
. \/ ___ / > ィ
↑
杉山三郎平誠胤(のぶたね)夢野久作の祖父
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
25 :115:2010/03/27(土) 22:42:40.30
ID:Kzmf5l4s0 ┌────────────────────────┐
│ さらに三郎平は孫に漢学だけではなく、能も仕込んだ │
└────────────────────────┘
/ ̄ ̄\
/ _ノ三\
| ==( ◎)-(◎)
| (((__人__)
. | ノ 武士の子たる者が乱舞を習わぬというのは一生の恥じゃ
| ∩ ノ ⊃
/ ./ _ノ 先生のもとでちゃんと習ってこないと 家に入れてやらんぞ
(. \ / ./_ノ │
\ “ /___| |
. \/ ___ / , ──.、
/ _ノ \
| ● ● うう 遊びたいのに……
. |⊂⊃ (_,、_,)
(( ! }
ヽ ノ ← 杉山直樹 九歳
/ ヽ、
┌───────────────────┐
│三郎平は直樹を心伏していた喜多流師範 . .|
│梅津只圓(うめずしえん)門下に入門させた .|
└───────────────────┘
『
梅津只圓翁伝』
夢野久作は後に喜多流の謡曲教授になる。彼の作品には能について扱ったものも多い。
26 :114:2010/03/27(土) 22:47:54.45
ID:Kzmf5l4s0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
__
/ ─ \ ┌───────────────────┐
| ● ● │漢籍を素読し、ふり仮名の無い新聞を. .│
|⊂⊃ (_,、_,) │ │
| L:::} │スラスラと読めるようになっていった直樹は. ..│
ヽ |\ ノ /| │ │
/⌒ノ \/ ( ) │「神童」と呼ばれる程だったという .│
| | 新聞 | └───────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___
/ \
/ ⌒ ⌒\ 夢野久作は頭脳明晰、記憶力抜群な少年だったのですね
/ ( ●) (●)\
i ::::::* __´___ * .i
ヽ、 `ー'´ /
/ \
27 :113:2010/03/27(土) 22:51:02.46
ID:Kzmf5l4s0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j ……ただ悪いこともあった
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 直樹が漢籍をチャンと素読出来たり、謡曲をキチンと謳うと
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/ ご褒美のつもりか幼子の直樹にキセルをもたせ、喫煙癖を付けてしまったのだ
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ ⌒ 三\ ( ;;;;( トントン(坊ちゃん)、ようできたのう
| ==( ◎)-(◎) ) ;;;;) ちょこっとこりば吸うてんやい
| (( (__人__) /;;/ __
. | `ー'ノ l;;,´ / ─ \
| ∩ ノ)━・' . ● ● |
/ / _ノ´ (_,、_,) ⊂⊃|
(. \ / ./ │ { |
\ “ /___| | ヽ /
. \/ ___ / > ィ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
28 :112:2010/03/27(土) 22:54:09.32
ID:Kzmf5l4s0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j おかげで彼は早くからニコチン中毒になってしまった
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 中学校へいっても治らなかったため
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ 遂に彼の喫煙は教師公認となってしまったという
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
____ ____
/ \ ( ;;;;( / \
/ _ノ ヽ__\) ;;;;) /ノ \ \
/ (─) (─ /;;/ /(●) (●) \ 彼の健康をさぞ
| (__人__) l;;,´| ニコチン中毒の神童…… | __´__ u |
./ ∩ ノ)━・'/ \_ `ー'´ _/ 損ねたでしょうね……
( \ / _ノ´.| | なんか斬新だお ⊂ ヽ∩ / \
.\ " /__| | '、_ \| |
\ /___ / \ \ / /
29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 22:56:05.07 ID:JZVBRKwZ0
じいちゃん何という事を… 30 :111:2010/03/27(土) 22:58:07.32
ID:Kzmf5l4s0 / / `ヽ
/ ,' \
/ ! / / , , } ヽ ヽ
,' │ {, 'i ィレ'レ| ハ ハ ! ハ
,イ | |‐‐‐-、 レ' _ム__!_i/ ! }
~ レ、 i ,ィ≠、 ___ }ノノ}ノ
N,ヘ V:rソ {!::jテ// 三郎平にとっては周囲に自慢するほど出きの良い孫だったようだが
` レヽ ! ̄ ' └' //
`ヘ |>、 ‐ , イ/ 息子、つまり直樹の父、茂丸はあまり気に入らなかったようだ
,∨- ≧ー≦´W
,<ヾ、 \ニミ! `¨ヽ__
/::::\ , ――┘、/, ―‐┤
/::::::::::|  ̄ ̄ ̄ iー 'i , !、
/::::::::::::レ┐ | | { l
〈:::_/::{ ] | | └,ヘ
/::´::::::::::>ー' │ ! !::}
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ _ノ \ /三ヽ、_ \
| ○-○ (◎)-(◎) |
. | ___(_::::::)___ 十で神童、二十歳で才人、三十で只の人とよく申します (__人__)) ) |
| \___ へ__/ ( |
. | }. 直樹は病身でアレだけできるのですから . { |
. ヽ }. なるべく学問から遠ざけて体を荒っぽく鍛えて下さい ⊂ ヽ∩ く
ヽ ノ | '、_ \ / )
/ く | |_\ “ ./
↑ ヽ、 __\_/
夢野久作の父 杉山茂丸
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
31 :110:2010/03/27(土) 23:00:50.64
ID:Kzmf5l4s0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,.-‐=‐-._
/"'''"'''"'''"'''ヾ:、
〃 ヾ:、
| ',
| l
| ,,,,,, ,,,,,,,, l
i⌒\ ‐=,ニニ 、 ,.ニニ 、l
l l \ri' -ャゥ }={ tァ H l
l〈l . `‐- ' ヽ`‐- ' |ソ
ヽ| く、. ,ノ |/
r───-<', l
:::::::::::::::::::::::::::丶 ´≧ニニ≦` /\ 杉山茂丸(すぎやま しげまる、1864 - 1935)
:::::::::::::::::::::::::::::::::\ `  ̄´ /:::::::::\
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ──-<´::::::::::::::::::: 明治から大正、昭和初期にかけて、各界実力者と結び
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨//// /:::::::::::::::::::::: 経済や外交内政などにさまざまな献策を行った人物
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨// /:::::::::::::::::::::::::
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j 自らは無位無官を通したが、日露戦争や日韓併合などの裏面で
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 活躍した在野の国士杉山茂丸
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
32 :109:2010/03/27(土) 23:05:14.68
ID:Kzmf5l4s0 /, | /:: , l:: i::. }::ヽヽ::.ヽ \
.// .:! :| : /:::/:/::/i: /: !: }i:',ヽ:|
i,i .::| :|: :: !,/_ム/_ l:/::: l:: !l::! i::! 伊藤博文、山県有朋、といった元老
. ! l .: : .::::| :i:.:: レ',ソ,_/`!::/i:/ i:! |
. !.:! ::. : .:.::/´', !::: | ! ヾ.i´:i` !/ / ! 児玉源太郎、桂太郎、田中義一、後藤新平ら軍人、政治家
i:l', :::::. :. ::. ::〈 、'_゙il::::. |.| j_ソ ゙、_
ヽヽ、:::::::::. :::.::::\ニ',::. ii::! ノ 頭山満、吉田磯吉といった国士、侠客まで幅広い人物らと交流し
ヾ、i::::l::::l::::',:| ',::. !',! ィ´
i|ヾ:!:::i::::/ヽ ヽ. l 丶. / 高位高官を影から操るその様は人形遣いとあだ名された
ノ /ii/lノ ヽ:r‐y┬ '
イ'"`'‐- 、 / ヽl/ '
/ \__{ヽ、
, -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ 高い記憶力、説得力、行動力を持ち、重臣の隠し子の世話をして
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 彼らの弱点を握り、政界の裏から影響力を発揮した
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>, 明治、大正、昭和初期に活躍した怪人物
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
33 :108:2010/03/27(土) 23:08:40.47
ID:Kzmf5l4s0 ____ ___
/ \ / \
/ ─ ─\ 夢野久作の父親は /ノ \ \ こういう凄い人を親に持つと
/ (●) (●) \ / (●) (●) \
| (__人__) | とにかく凄い人物だったのかお | __´___ u. | 色々大変そうですね……
/ ∩ノ ⊃ / \ `ー'´ /
( \ / _ノ | | ノ \
.\ " /__| |
\ /___ /
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ できる夫の言うとおり 色々と大変だった
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| |
〃 l lュ} ', -、.V/ / |
. l| l ' 5iツ ノ ハ| 久作の幼少期の頃、茂丸は国事に奔走し、方々に借金を作り
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、 家に居ることは滅多に無く、杉山家は貧窮の生活に喘いでいた
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 23:08:43.80 ID:B+AYZyLWO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それから私が五六歳の頃になると、父が久しく帰らず、家が貧窮の極に達していたらしい。
住吉の堂々たる住宅から、博多鰯町、旧株式取引所裏のアバラ屋に移って、母は軍隊のシャツ縫いや
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
足袋の底刺しで夜の眼も合わさず、お祖母さまと当時十七八であった父の妹のかおる伯母の二人は
押絵作りにいそしみ、彩紙や、チリメンの切屑を机一パイに散らかしていた。
∧∧ . . . . . ||
: . : , (´-`;) . ; .||
;::: ; ; : ; , , : : : /ー-ヽ ; ;.||
冫、; : . :: . ; : . :. . ; /( / ) : .:; ||
`;, , .;; . ,, . ; ; ; ; (_iつとi)_/ . , ..:||
= === === = = === (___ノつ==.\
〃
〃 『
父杉山茂丸を語る』
/
〃
========================
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____ ___
/― ―\ / \ しかも父親が家にいない
/ (一) (一)\ アバラ屋とか内職とか /ノ \ \
/ U (__人__) \ / (●) (●) \ 幼児期の久作も
| `⌒ ´ | いかにも貧乏そうだお…… | __´___ u. |
\ / \ `ー'´ / 大変だったでしょうね
36 :106:2010/03/27(土) 23:15:05.71
ID:Kzmf5l4s0 / / `ヽ
/ ,' \
/ ! / / , , } ヽ ヽ
,' │ {, 'i ィレ'レ| ハ ハ ! ハ いなかったのは実は父親だけではない
,イ | |‐‐‐-、 レ' _ム__!_i/ ! }
~ レ、 i ,ィ≠、 ___ }ノノ}ノ 少し時間が前後するが、久作が二歳の時
N,ヘ V:rソ {!::jテ// 母親のホトリが離縁され家を去っている
` レヽ ! ̄ ' └' //
`ヘ |>、 ‐ , イ/ 理由は不明だがどうも厳格な舅、姑の意にそぐわなかったらしい
,∨- ≧ー≦´W
,<ヾ、 \ニミ! `¨ヽ
____
/ \
>>35の「母」とは継母だったというわけですか
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ >`ー―-. 、
| ´ | ∩ /: : : : : : : : : :ヽ.
\ ⌒ / ( ⌒) //.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. V その通り 離縁した翌年、茂丸は
/ \ !イ.: 从:.! :.:.:.::.:.:!:八
V.:.!ハ:ヾ::ヽ::::ノ:::j:ゝ 戸田七蔵の娘、幾茂(いくも)を後妻に迎えている
{:小-ヘ、:ヘ:V/:;イリ
`ー仏-=<_
イ ヽ\
xく l |: ヽ\
f:::::.ヽL..-―-、___> ヽ
|::::::::!\_ /⌒ト-―'´
37 :105:2010/03/27(土) 23:18:19.51
ID:Kzmf5l4s0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
, ──.、
/ \
○-○ |≡≡ そんな家族を顧みること無く、茂丸は西へ東へ国事に奔走
___(_::::::)___ |≡≡
\___ へ__/ / ≡≡ 困窮した杉山家は遂に一家離散に近い状態になる
ヽ ノゝ/´`ミ
,;;;;;, (ゞニニノノ __/\__ミ
\ \/ X \≡≡
`゙゙彡゙ \ \≡≡
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/, | /:: , l:: i::. }::ヽヽ::.ヽ \
.// .:! :| : /:::/:/::/i: /: !: }i:',ヽ:|
i,i .::| :|: :: !,/_ム/_ l:/::: l:: !l::! i::!
. ! l .: : .::::| :i:.:: レ',ソ,_/`!::/i:/ i:! |
. !.:! ::. : .:.::/´', !::: | ! ヾ.i´:i` !/ / !
i:l', :::::. :. ::. ::〈 、'_゙il::::. |.| j_ソ ゙、_ 三郎平夫妻は直樹を連れて二日市へと移り漢学塾を開き
ヽヽ、:::::::::. :::.::::\ニ',::. ii::! ノ
ヾ、i::::l::::l::::',:| ',::. !',! ィ´ 幾茂は次男峻、長女瑞枝を連れて柳原の親戚宅へと移った
i|ヾ:!:::i::::/ヽ ヽ. l 丶. /
ノ /ii/lノ ヽ:r‐y┬ '
イ'"`'‐- 、 / ヽl/ ' ┌─────────────┐ ┌──────┐
/ \__{ヽ、 │ 三郎平夫妻(久作の祖父母) │> │ 二日市へ │(久作)
/_,, -‐‐‐-- ,,_ \_,ヽ‐、. └─────────────┘ └──────┘
┌─────────┐ ┌────────┐
│ 幾茂(久作の継母) │ > │ 柳原の親戚宅へ │ (次男峻、長女瑞枝)
└─────────┘ └────────┘ ┗いずれも幾茂の子
久作とは異母弟妹
38 :104:2010/03/27(土) 23:21:34.16
ID:Kzmf5l4s0 ___
/ ヽ、_ \
/ ̄ ̄ ̄\ /(● ) (● ) \
γ⌒) (⌒ヽ えーと 父親はあまり家に帰らない /::: __´__ :::::: \
/ _ノ ノ \ \ `、 実の母親は離縁で、継母に弟妹らは別居で | l^l^lnー'´ |
( < (○) (○) | ) \ヽ L /
\ ヽ (__人__) / / ……こんがらがってきたお ゝ ノ
/ / 複雑な家庭事情だったのですね
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ 両親不在の少年時代は杉山直樹の心に影を落としたものと思われる
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| |
〃 l lュ} ', -、.V/ / |
. l| l ' 5iツ ノ ハ| 彼は後に、子どもたちに慕われる良き父親となるが
ヽトlヽ` /,.-シイ″ それはこの少年時代が影響していたのかも知れない
`¨仁'-'ユ、
,r=ニ.ヽ、 l 自分の父を反面教師として……
_,.. イ ヽ`、 ヽ
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
39 :103:2010/03/27(土) 23:23:46.92
ID:Kzmf5l4s0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 接触が少なかった父子だが、直樹はこの父親を畏怖していた
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ こんなエピソードが有る……
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌──────────────────────┐
│直樹十六歳の時、久しぶりに帰宅した父茂丸から │
│ │
│将来の志望を聞かれた .│ 杉山直樹(夢野久作)十六歳
└──────────────────────┘ ↓
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ == = / ヽ、_ \
| ○-○ (●)(● ) |
. | ___(_::::::)___ (__人__) |
| \___ へ__/ 直樹 貴様は進路をどう考えている (`⌒ ´ | はい私は……
. | ∩ ノ ⊃ . { |
/ ./ _ノ { ノ
(. \ / ./ │ ヽ ノ
\ “ /___| | ノ ヽ
. \/ ___ / / |
40 :102:2010/03/27(土) 23:26:30.19
ID:Kzmf5l4s0 / ̄ ̄\
/ ヽ、. _ノ \
| (●)(●) |
| (__人__) | キリッ
| ` ⌒´ |
私は文学で立ちたいと思います | }
ヽ }
人_____ノ"⌒ヽ
/ \
/ へ \
( ヽγ⌒) | \ \
\__/
┌───────────────────┐
│ と直樹が答えると茂丸は嫌そうな顔をする .│
└───────────────────┘
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\ _
/ _ノ三ヽ_ / ヽ、_ \ /
| ○-○ ジトーッ (●)(● ) | \
. | ___(_::::::)___ (__人__) u |  ̄
| \___ へ__/ …… (`⌒ ´ | ビクッ
. | ∩ ノ ⊃ . { |
/ ./ _ノ { ノ
(. \ / ./ │ ヽ ノ
\ “ /___| | ノ ヽ
. \/ ___ / / |
41 :101:2010/03/27(土) 23:28:52.52
ID:Kzmf5l4s0 / ̄ ̄\
/ ノ \ \
| (●)(●) |
. | u.(__人__) .| そ、それなら美術家に……
r、 | ` ⌒´ .|
,.く\\r、 ヽ ノ
\\\ヽ} ヽ /
rヽ ` ヽ / ァ'´ヽ
└'`{ . \.| / i
ヽ、._ ヽ、_,r' .|
`ヽ、 /' |
`'ー'´
┌──────────────┐
│ と言うと更に不愉快な顔になる │
└──────────────┘
_
,ィ彡'
/ ̄ ̄\ ミ三彡' / ̄ ̄\ _
/ノし _ノ三ヽ_ ,r'´ / ヽ、_ \ /
| ⌒`:::::○-○:::: ー´ ,r'ミッ⌒'ミ_ (◯)(◯ ) ||| | \
. | ___(_::::::)___ 、ッ (__人__) u |  ̄
| \___ へ__/ '―ー´ (`⌒ ´ | ゾクッ
. | ∩ ノ ⊃ 、__ ,r'ミニ三ミ_ィ, . { |
/ ./ _ノ  ̄´ 'ミ_ { ノ
(. \ / ./ │ _ ヽ ノ
\ “ /___| | ミ_ィ, ノ ヽ
. \/ ___ / 'ミ_三ミ / |
42 :100:2010/03/27(土) 23:30:50.62
ID:Kzmf5l4s0 / ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .|
!U (__人__) |
, っ `⌒´u | そんなら身体を丈夫にするために農業をやります
/ ミ) /
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
┌────────────────┐
│ と答えたらやっとニコニコ顔になった │
└────────────────┘
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ / ヽ、_ \
| ○-○ (一)(一 ) |
. | ⌒___(_::::::)___ (__人__) u |
| \___ へ__/ ニコニコ (`⌒ ´ |
. | ∩ ノ ⊃ . _y⌒ヽ-一ッ { |
/ ./ _ノ ´ <´ { ノ
(. \ / ./ │ ( ホーッ } ヽ ノ
\ “ /___| | ヽ _,,ノ ノ ヽ
. \/ ___ / ゝ一'' / |
43 :99:2010/03/27(土) 23:33:38.12
ID:Kzmf5l4s0 / ̄ ̄\
/ _ノ三ヽ_
| ○-○
. | ___(_::::::)___ フン 農業なら賛成する
| \___ へ__/
. | ∩ ノ ⊃ 貴様は俺の顔色を見て、ヤタラに目的を変更しているが
/ ./ _ノ そんなダラシのない神経過敏では、今の生存競争の世の中勝てるものでない
(. \ / ./ │
\ “ /___| |
. \/ ___ /
/ ̄ ̄\
. / ノ \\/`i
| ○-○ ./ リ 芸術とか、宗教とかいうものは神経過敏のオモチャみたようなものだ
. | ___(_::::::)__.| /
| \___ へ__/リ ヒ
. ヽ // ,`弋ヽ 現在の日本はロシヤに取られようとしている
__ ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l
/ : : :介〈 `ー〈::....ノ Vヽ 日本が亡びたら文学も絵もあったものでない……
| : : : : ::〈 「`ヽ_ー 、 `ヾ_/ //:|
| : : : : : /: | {::::} フ-、`ー┴‐- │
| : : : 〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|
44 :98:2010/03/27(土) 23:35:44.24
ID:Kzmf5l4s0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ 日々政治という現実を相手にしている茂丸にしてみれば
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 芸術に没頭する人生など認められるものではなかったのだろう
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
___
/ \ 「私は父の熱誠に圧伏されながらも ____
/ ─ ─ \ 生涯の楽しみを奪われた悲しさに / \
/ (●) (●) \ 涙をポトポトと落しながら聞いていた」 /─ ─ \ ちょっと気の毒な
.| (__人__) | __ / (●) (●) U \ 話ですね……
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / ……だってお | __´____ |
(⌒ / 父杉山/ / \ ⊂ ヽ∩ <
i\ \ ,(つ 茂丸 / ⊂) | | '、_ \ / )
| \ y(つを語る/__⊆) | |__\ “ /
| ヽ_ノ  ̄ ̄ ̄ \ ___\_/
45 :97:2010/03/27(土) 23:38:03.81
ID:Kzmf5l4s0 / , /, 、 \. ヽ、
/// / / | \ .} lヽ、
ノ // / /、 | '、\ ヾ. | l lへ、
/j/{ |/ノ_.lル' `_≧_ヽ}ル',、ヽr'ー`
' !ィ|Y{ ィ五` ´ r‐ァ| /_ハ,lYゝ
リヽヘ匕! 匕メ/,ノ)/リ 尤も、直樹はこの父親に全く反抗しなかったわけではない
}、!、 '_ //ll//
,、 レ l>ェ .ィレリ人l
>>39から三年後 杉山直樹はある決心をする……
f冫^ソ/ ,-'T ̄∠' __,/`!、
/ / /.| ll ヒニ二コ/ へ.._
,,ェl / ./ ::| ll |イ⌒ヘ/ 〃7、
Y::`' ̄丿|::::::|.ll | l / //l }
/:::::::::::::゙iノ::::/|ll | ,n、.レ′ //:::::|_⊥
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 相変わらず家は貧乏しているというのに 父上は何を考えているのだ
| ( ー)(ー)
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ 政治だの何だのと忙しいのは分かるが
.l^l^ln }
. ヽ L } ここまで家族をほったらかすなんて無責任すぎる
ゝ ノ ノ
/ / \
/ / \
. / / |ヽ、二⌒)、
ヽ__ノ
47 :96:2010/03/27(土) 23:41:08.51
ID:Kzmf5l4s0 / ̄ ̄\
/ ヽ、. _ノ \
| (●)(●) |
| (__人__) | お祖父様はもう亡くなってこの世に居ない
| ` ⌒´ |
| } 俺があの人をなんとかするべきだろ
ヽ }
人_____ノ"⌒ヽ 家族のためにも……
/ \
/ へ \
┌──────────────────────┐
│杉山直樹は父茂丸に直訴するため汽車に乗って │
│ │
│福岡から鎌倉にある茂丸の住居へ向かった │
└──────────────────────┘
┏━━━━━━━━━━━
||||||||||||||||||||||||| ガ タ ン ゴ ト ン ......┃ / ̄ ̄\
||||||||||||||||||ニニニニニニニ((ニニニニニニニニニ((ニニニニ .┃ _ノ ヽ、_ \
|||||||| ヾ ヾ ┃ (●)(●) |
||||  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ┃ (__人_.) | 皆に相談せず
|~|,|~|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|~|,|~| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ..┃ |`⌒´ | 飛び出してしまったが……
|ii| |ii| |ii| |ii| ......┃ ヽ,_ _ノ __
|ii| |ii| |ii| |ii| ......┃ / ヽ | |
|ii|.l^l^l ∧_∧ ∧∧ l^l^l i| ..l^l^ .┃ __l i __ i || |
|,,,.|::|::|( ´ -).____.(-Д-,,) |::|::|,,|________|::|: ..┃ (jjニ | (jjニ ノ| |
|::|::|( ∝) と ヽ|::|::| ..|::|: ..┃ | |⌒__i⌒_| ̄ ̄ |
_|::|::|ニニl ) (´lニニ|::|::|ニニl lニニ|::|: ..┃ (⌒_)(⌒_)|____|
::::::: |:::::::::::::|し' し|:::::::::::::|::::::::::::::| |:::::::::::::|: ..┃
49 :95:2010/03/28(日) 00:00:52.40
ID:m437+n3o0 (:;:〃::;;;)
g _,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,:;::;;(:;〃:;;::〃:;;″ ┌───────────┐
,ノ,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;丿:;〃:;;::〃:;;″''', │ 鎌倉 杉山茂丸の住居 │
,,,,,,,,,,,,ノ゙,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;,ノ;:;(:;:;;::〃:;;″,);::〃 └───────────┘
,',',',',ノlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll:;(:;〃:;;::〃:;;″ :;;::〃
 ̄ ̄ ̄l: ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ヾ:〃:;;:〃:;;;:〃:;;)
| 丿,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,丿il″.゙:;ソ'l:;;::〃,:;;;:〃:;;)
| .l|l l:〃:;):; l ⌒ | |ヽヽ
,,,,,,,,,,,,,,,,|゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚l|l''''''''''''''''''l :〃 ;),, l゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚|゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚| ;丿:;〃
l:l'''l |:::::::::::::::::l|l | ̄| _ l:;:〃:;;). . |::::::::::::::::::::::|::::::::l| ̄l|: ,:.;,丿;;;:〃:;;)
l:l,,,l |:::::::::::::::::l|l |_|:| : |:l: /~~゙ヽ' |::::::::::::::::::::::|::::::::l|κl| ”ー、,,,,,_
l:l,,,l |:::::::::::::::::l|l : ::.l: ヽ;;:;丿,,,,-' |::::::::::::::::::::::|::::::::l|ξl|.,l: `゚‐
""""|:::::::::::::::::l|l ._,,,,,,,,,,,,、lr''''''゙゙゙~ |::::::::::::::::::::::|:::;;;,.l|πl|゙` ,'''゙゚゙"ヽ
.llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll,!'''゙゚゙"ヾ l| l| *i,,,'l_ :;:;::゙:;
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .'l_ :;:;::゙:;|l" ̄:;:ヽ `─"'
`─"' ヽ_,,丿 .,.,:;;.,;
|┃
|┃ / ̄ ̄\
ガラッ. |┃ / ヽ、.::::_ノ \
|┃ |:::::(●)(●)::::|
|┃三 |::::::::(__人__):::| 父上! お話があります!
|┃ |:::::::::`::⌒´:::::::|
|┃ |:::::::::::::::::::::::::::}
|┃三 ヽ::::::::::::::::::::::::}
|┃三 人_____ノ"⌒ヽ (←汽車の煙で服も顔も真っ黒になっていた)
|┃ / :::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
51 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:06:12.35
ID:m437+n3o0 ∫ ∬ ∫
/ ̄ ̄\ _ / ̄ ̄\
/ == = / ヽ、:::::_ノ::::::::::::\
| U ○-○ \ (●)(●::):::::::::::|
. | ___(_::::::)___  ̄ (__人__)::::::::::::::::|
| \___ へ__/ ビクッ (`⌒::´::::::::::::::::::|
. | ∩ ノ ⊃ . {:::::::::::::::::::::::::::::|
/ ./ _ノ {::::::::::::::::::::::::::ノ
(. \ / ./ │ ::ヽ::::::::::::::::ノ
\ “ /___| | ::::ノ::::::::::::::ヽ
. \/ ___ / /::::::::::::::::::::|
┌──────────────────────┐
│息子の異様な風貌と迫力に一瞬茂丸は驚いたが .│
└──────────────────────┘
/ ̄ ̄\
/ == =
| ○-○ まあ 上がれ
. | ___(_::::::)___
| \___ へ__/
. | ∩ ノ ⊃
/ ./ _ノ
(. \ / ./ │ ┌────────┐
\ “ /___| | │.と座敷へと誘った...│
. \/ ___ / └────────┘
57 :93:2010/03/28(日) 00:10:52.97
ID:m437+n3o0 || ゙̄''ー-、______________,,-―'" ̄
二.二二二二i===||________,| | | |
|| ||;; | | | ̄ ̄__i__ ̄ ̄| |―┬―┬―┬―| | |\
|| ||;; | | | | |: | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | | \
|| ||;; | | | | |: | |. i i | | | |
|| ||;; |_| | |_|: | | (_;;). | | | |
|| ||/ /| | | | ̄ ̄ ̄| ̄''''――| | | |
|| ||/ /三.三.三.三三|_|―――|゚____,|_| \ |
|| || / \ \|
|| ||' \
//|| / \
//|| /
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ == = ヽ、:::::_ノ:::::::::::\ ピクーン
| ○-○ で、何しに来たんだ? ___∧,、(○)(○::)::::::::::|___
. | ___(_::::::)___  ̄ ̄ ̄`'` (__人__)::::::::::::::::| ̄ ̄ ̄
| \___ へ__/ (`⌒::´:::::::::::::::::|
. | ∩ ノ ⊃ {::::::::::::::::::::::::::::|
/ ./ _ノ {:::::::::::::::::::::::::ノ
(. \ / ./ │ ::ヽ::::::::::::::::ノ
\ “ /___| | ::::ノ::::::::::::::ヽ
. \/ ___ / /::::::::::::::::::::|
┌────────────────────────────┐
│ 「この時ほど父に烈しい怒りを覚えたことはない」と後に彼は語る │
└────────────────────────────┘
58 :92:2010/03/28(日) 00:12:12.14
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ ヽ、.::::_ノ \
|:::::(●)(●)::::|
|::::::::(__人__)::::| 父上! あなたは家族のことをどうお考えなのです!
|::::::::::`:⌒´:::::::|
|:::::::::::::::::::::::::::} 年老いたお祖母様を、苦労しているお母様を、幼い弟、妹たちをほおっておいて
ヽ::::::::::::::::::::::::} どうするつもりなのですか!!
人_____ノ"⌒ヽ
/ :::::::::::::::::::::::::::::::::\
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ == = ヽ、:::::_ノ:::::::::::\
| ○-○ (一)(一 ):::::::::::|
. | ___(_::::::)___ (__人__)::::::u:::::::|
| \___ へ__/ …… (`⌒::´::::::::::::::::::|
. | ∩ ノ ⊃ . {::::::::::::::::::::::::::::| ハア……ハア……
/ ./ _ノ {:::::::::::::::::::::::::ノ
(. \ / ./ │ ::ヽ::::::::::::::::ノ
\ “ /___| | ::::ノ::::::::::::::ヽ
. \/ ___ / /::::::::::::::::::::|
60 :91:2010/03/28(日) 00:15:20.76
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ == = ヽ、:::::_ノ:::::::::::\ _
| ○-○ (○)(○ ):::::::::::| /
. | ___(_::::::)___ (__人__)::::::u:::::::| \
| \___ へ__/ すまん 俺が悪かったよ (`⌒::´::::::::::::::::::|  ̄
. | ∩ ノ ⊃ . {::::::::::::::::::::::::::::|
/ ./ _ノ {:::::::::::::::::::::::::ノ
(. \ / ./ │ ::ヽ::::::::::::::::ノ
\ “ /___| | ::::ノ::::::::::::::ヽ
. \/ ___ / /::::::::::::::::::::|
┌──────────────────────────┐
│父のこの言葉を聞くと張り詰めていた気持ちが切れたのか │
│ │
│どっと涙が溢れたという │
└──────────────────────────┘
_,. -┬ fニト、
r'´::::、r::::|::::|::,.L::|
|:::::::::(_ノ::::j::{.::::'、\
|:::::::::::::}‐イ-上::::〉.::\
|:::::::::::ノ´::::::::::::::/)゚o::::|
i::::::::::::::::::r‐‐人__):::::.|
::::ヽ:::::::::.ノ::::`:⌒´:::::::|
i:::::::!,::::::::::::::::::::::::ノ
.',:::::::ヽ、::::.:::::::::/
\:::::.::::::::::::::::ヽ、
::\::::::::::::::::::::|.i
::|:::::::::::.:::::::|
61 :90:2010/03/28(日) 00:18:23.57
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ \ 貴様の神経過敏はまだ治らぬと見えるな
| ○-○
. | ___(_::::::)___ 俺が直接に教育してやる
| \___ へ__/
. | }.
. ヽ }. 母さんも皆もこっちへ呼んでこい
ヽ ノ
/ く
/ ̄ ̄\
. / ノ \\/`i
| ○-○ ./ リ それにはまず学校を卒業することだな
. | ___(_::::::)__.| /
| \___ へ__/リ ヒ 今の社会では中学以上の学力はいらん
. ヽ // ,`弋ヽ
__ ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l 中学を出たら軍隊へ入れ 貴様の好きな連隊へ入れてやる
/ : : :介〈 `ー〈::....ノ V
| : : : : ::〈 「`ヽ_ー 、 `ヾ_/ //:|
| : : : : : /: | {::::} フ-、`ー┴‐- │
| : : : 〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
62 :89:2010/03/28(日) 00:21:57.02
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ こうして家族は鎌倉へと移り、茂丸と一緒に暮らす事になる
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 杉山直樹は中学を卒業すると、志願して近衛軍歩兵第一連隊へ入った
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
__ O―~,
/ ◎ \ || 軍 |
ヽニニニノ. ||―~'
|(●) (●). || ┌─────────────────────────┐
/ノ| (__人__).| || │.落伍者が多数出る厳しい訓練にもよく耐え、頑張っていた |
/^/ .| `⌒´ | || └─────────────────────────┘
( ' ̄ ヽ _/ヽ. ||
 ̄ ̄| = V // | | ||
| // | |. .||
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
63 :88:2010/03/28(日) 00:25:29.75
ID:m437+n3o0 ___
;/ノ ヽ\; ┬-.∥
_;/ (○)(○) |__; | | ∥
| |:::(__人__)::/ | . Y ∥
| ;\ `⌒u./ | | ∥
/:~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:/.| | ∥
,|:::::. .......::/| | / ∥
/.::::: .. ...::::::|'(/\_/ ∥
../:.::: .. :.:::/.:/ /∥\
/.:::. ....:::..:::/.:/
' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ _/
|_| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_|
┌────────────────────────┐
│が 頑張りすぎたのかある時、訓練中に倒れ意識を失い |
│ │
│そのまま危篤状態に陥ってしまった │
└────────────────────────┘
|┃
ガラッ. |┃ / ̄ ̄\ ┌──────────────┐
|┃ / ヽ、. _ノ \ │ この知らせを聞くと茂丸は激怒し. |
|┃三 | ○-○ | └──────────────┘
|┃ | ___(_::::::)___.|
|┃ | \___へ___/ | 連隊長はおるか!
|┃三 | }
|┃三 ヽ } ┌───────────┐
|┃ 人_____ノ"⌒ヽ │ と、上官に面会を求めた. |
|┃ / | └───────────┘
64 :87:2010/03/28(日) 00:28:56.92
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ ヽ、 _ノ .\/`i
| ○-○ ./ リ
. | ___(_::::::)___ | / いかに軍隊が死の訓練をするとはいえこんな扱いをしていいのかッ
|\___ へ__/ リ ヒ
. ヽ // ,`弋ヽ 直樹は俺の息子だが、天皇陛下の赤子でもある
ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l
/〈 `ー〈::....ノ V
| ヽ_ー 、 `ヾ_/ //
| フ-、`ー┴‐-〃
`ー‐一′
/ ̄ ̄\
/ ヽ、. _ノ ノ L
| ○-○ ⌒
| ___(_::::::)___.| 陛下の赤子を預かっておきながら
| \___へ__/ |
| |::::::| } 殺すような真似をして上官が勤まると思っているのか!
ヽ `ー' }
人_____ノ丶
/ \ |i
/ ヽ !l ヽi
( 丶- 、 しE |そ ドンッ!!
`ー、_ノ ∑ l、E ノ <
レY^V^ヽl
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
65 :86:2010/03/28(日) 00:31:53.37
ID:m437+n3o0 ___
/)/⌒ ⌒\
/ .イ ' (●) (●)\ 茂丸は自分の息子に無関心だったわけではなかったのですね
/,'才.ミ). 、_',__, \
| ≧シ' |
\ ヽ /
___
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \ 入院中のエピソードも直樹にとって大事な思い出となったみたいだお
.| (__人__) | __
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ /
(⌒ / 父杉山/ /
i\ \ ,(つ 茂丸 / ⊂)
| \ y(つを語る/__⊆)
| ヽ_ノ  ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
見舞に来た父の厳粛そのもののような顔を見て、私はモウ死ぬのかなと思った。
「貴様が死なずに少尉になって帰って来たら、この帽子を遣る」
父は云った。私は病床で是非なおって見せる……この帽子を冠らずにはおかぬと心に誓った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『父杉山茂丸を語る』より
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:34:58.79 ID:unNuwJI10
しかし酷い親父だな。出来るなら最初から家族集めろよw
せめて金を入れろよ・・・
金銭面では結構茂丸に頼っていました 多い時で七十円から百二十円
当時巡査初任給が二十円といった時代でしたから 結構な大金ですね
追記
仕送りをもらっていたのは もっと後になって茂丸に余裕が出てきてからですね すいません
この時点ではまだ貧乏生活だったかな 69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:37:21.80 ID:Y7tIDxws0
不器用な親父なんだよな
まあ仕事が仕事だし・・・家族に重きを置いてることが知れ渡ると人質に取られるやもしれん
自分の家族と距離を置いていたのは家族のためでもあった
夢野久作は「氷の涯」が面白いよね。ロマンチックなラスト、切ない 70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:38:36.57 ID:unNuwJI10
>>69
なるほど
ってやっぱりそれにしても何かしらの方法で金は入れてやれよw 73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:41:03.88 ID:Z6V3P7Ji0
この父ちゃん、居留守使われた相手に、尻から出た寄生虫を千切って並べるって嫌がらせしたんだよね
帰った後に、火鉢の縁に、寄生虫の端切れが転々と並べられたっちゅー……('A`)
それは頭山満のエピソードですね 近世怪人伝に収録されています 青空文庫にありましたね 71 :85:2010/03/28(日) 00:39:20.68
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l } 厳しい訓練に耐え、難しい仕事も自らかって出る熱心さで
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ 志願兵一年の期間を終え 杉山直樹は優秀な成績で
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ 士官見習いとして近衛軍を除隊した
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ;;;;;;;;;;ヽ
/ ;;;;;;;;;;;;;、
| ノ \ ;;;;;;;;;;|
|( ●) (●) ;;;;;;;;;l
| (__人__) ;;;;;;;;il
| ` ⌒´ ; ;;;;;;;.;;;;;ヽ 訓練のかいあってか志願兵期間を終えた時には
! ;;;;;;/i;;;;;;;;ヽ、
\ ;;//;;;;;;;;;i;;;;;;ヽ、_ 文弱だった彼の体はスッカリ引き締まっていた
/)  ̄ ̄;l; ;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`‐-、
_ / :/ |;;;; /;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ヽ、
ノヾ `‐-" l , -‐"i /;;;ノ;;;;;;;/;;;;;;,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙ヽ,
ノヽ | / .ヽ!;;:/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;li
l , :l / , ;/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
( ヽノ .i i; ;l ,, ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
ヽ、 \l/_,-‐ 、:;| :;\,,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
ヽ、i \i;;;;;:));| ;;;;;;;;;/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐、;;;;;;;;;;/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:40:44.96 ID:unNuwJI10
ひ弱ってのは改善できるものなんだな 74 :84:2010/03/28(日) 00:42:36.48
ID:m437+n3o0 >`ー―-. 、
┌─────────────────┐ /: : : : : : : : : :ヽ.
│身長 五尺五寸六分(168.5センチ). | //.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. V ちなみにコレが徴兵検査時の検査結果
│ │ !イ.: 从:.! :.:.:.::.:.:!:八
│体重 十三貫弱(48キロ) │ V.:.!ハ:ヾ::ヽ::::ノ:::j:ゝ
│ │ {:小-ヘ、:ヘ:V/:;イリ
│筋骨薄弱 乙種合格 │ `ー仏-=<_
└─────────────────┘ イ ヽ\
xく l |: ヽ\
f:::::.ヽL..-―-、___> ヽ
|::::::::!\_ /⌒ト-―'´
.. ____
/ ― -\
. . / (●) (●)
/ (__人__) \ 筋骨薄弱って思いっきり書かれているお
| ` ⌒´ |
. \ /
. ノ \
/´ ヽ
75 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:43:18.18 ID:unNuwJI10
体重軽すぎるわw 76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:46:28.17 ID:Y7tIDxws0
俺と同じ身長体重かよwww
福岡出身だし親近感湧いた 78 :83:2010/03/28(日) 00:50:39.87
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
. /⌒ ー-、 ⌒ ⌒ ヽ _
/ ヾ 、、、ヽ〉 (●)(<) | / ポヽ
// 7ヽ_|」」ノ (__人_.) .| |. │ |
、-ー'`Y <,___ / ,′ / |`⌒´ | | ズ |
__≦ー`___ _二z<_ . / ,ム-.、 ヽ,_ _ノ イ !./
> 7  ̄、-‐ ´ ̄`'┴< ..ヽ  ̄  ̄⌒ヽ_,ィ! `ーイ ヽ.、 `ー″
<之′Y´/ \ \ ヽ、__.. 、 Y!、 /L ___,,`ー-.、
>{ ,' | 、 , ,. ,.l , ゙i `ヽ、-== 、 У i!/´フ 〃 ',
| !、{ | 寸寸T ハT7} ィ,l `ー-、/ Θ''´ l
′Ji, ゙i ゙i ( >) (<)|ハ| ,'、 ,′ ,ィ、 ハ
i⌒ヽ'(1. ''' _' ''' ノ川/⌒) l,゚' ,;l;, 、。, ;ノハ `ー-'' ',
. ヽ ヽx>、(_.ノ__,イ l |::::ヽ/ }`ー‐个ー -‐ '' ノ | l
∧ 人lハ:::::l,三|:::/l| ,:::::ハ | し-r┴-、 ノ l! 彳
┌─────────────────────┐
│それが除隊の日には力こぶを作って │
━━━━━━│ │━━━━━━━━━
│妹たちと戯れるぐらいに、鍛えられた体になった .|
└─────────────────────┘
____
/ \ ____
/ ─ ─\ まるで通販広告によくある /― ― \ 自分から熱心に鍛えた
/ (一) (一) \ /(●) (●) \ とありますね
>>71 | (__人__) | ビフォーアフターだお / __'___ \
/ ∩ノ ⊃ / | | 何か思うところがあったのでしょうか
( \ / _ノ | | .\ ./
.\ " /__| | / \
\ /___ /
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:53:24.30 ID:unNuwJI10
一年でそんなに変わるのか。
除隊時も体重測定してほしかったなw 79 :82:2010/03/28(日) 00:51:33.42
ID:m437+n3o0 /, | /:: , l:: i::. }::ヽヽ::.ヽ \
.// .:! :| : /:::/:/::/i: /: !: }i:',ヽ:|
i,i .::| :|: :: !,/_ム/_ l:/::: l:: !l::! i::!
. ! l .: : .::::| :i:.:: レ',ソ,_/`!::/i:/ i:! |
. !.:! ::. : .:.::/´', !::: | ! ヾ.i´:i` !/ / !
i:l', :::::. :. ::. ::〈 、'_゙il::::. |.| j_ソ ゙、_
ヽヽ、:::::::::. :::.::::\ニ',::. ii::! ノ
ヾ、i::::l::::l::::',:| ',::. !',! ィ´
i|ヾ:!:::i::::/ヽ ヽ. l 丶. / ……杉山直樹は生来ひよわな体だった
ノ /ii/lノ ヽ:r‐y┬ '
イ'"`'‐- 、 / ヽl/ ' 子どもの頃、直ぐに風邪をひいては肺炎になって
/ \__{ヽ、 咳に苦しんでいた
/_,, -‐‐‐-- ,,_ \_,ヽ‐、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌──────────┐
│ __ /│
│ /ノ ヽ\. / .|
│ ;| ○|||!○ |; / |
│ :| ヽ(_,、_,)/ |;. ...|
│ :| | }; .|
│ / ヽ /; .│
│ / ゝ <; ’ │
└──────────┘
そんな時の自分の姿を鏡に見て、子ども心に悲観せざるをえなかった、と述懐している
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
81 :81:2010/03/28(日) 00:54:25.88
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 父親の茂丸はこの病弱な我が子を見てがっかりしたらしいが
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 直樹の方も自分に相当悲観して、死んだ方が良いのでは
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/ と思いつめるほどだった
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
/ ̄ ̄ ̄\
/ ̄ ̄ ̄ \ / \ コンプレックス
/ ノ ヽ \ 病弱だった自分の体を / ─ ─ ヽ
/ (●) (●) \ | (一) (一) | というやつかお
| __´ _ | 意識的に鍛えようとしていたのでしょうか…… \ ∩(__人/777/
\  ̄ / / (丶_//// \
82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:55:38.85 ID:unNuwJI10
軍隊入る前からなんかできなかったのだろうかw 83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:56:37.07 ID:5Raw8xXd0
ほうほう 84 :80:2010/03/28(日) 00:57:17.35
ID:m437+n3o0 ‐ '"´ ̄` ー 、
_ ,. -‐ ´ ̄` ー- 、
一 ' "´/: : : : : : : : : : : : : :.:.:\
/ /: : : : : :/: : !: i: : ヽ..:.:.:.ヽ
,. ' //: : : : :/ :/ : :/:./: :.!: : ;.:.:ヽ:.i
-‐'´ /:.:/: : :/: /: /!: :/:,イ: :./: : :.}.:.:.:}:.:l
/: :/!: :.l.|/|:.:/ |:./|/ |: /!: :.l.:.l.:.:从:.l さて 直樹は軍を除隊した後上京し慶應義塾予科に入学する
∠ ヘ: /:l人代ナ7'‐l/ 'l7十ト|/.:/:/:!::ト、
/ 〈イ.l: :.lイtx=ミ 彳=‐ァri/:/:.∧| \ ……この頃、ある問題に彼は悩まされていた
/.!:.ト、lハ 廴 } 廴/ノ/r、:/ !
/イ|/l:.ト:.トヽ :. ///イ/
/!:!:〉;: ...、 ‐‐ //:.:/:/
/ l/ ! l/トレ> イ/// 継母幾茂の周辺から、彼を廃嫡させようとする動きが起こったのである
__,. -‐'フ /}\
,. ィ'TT |--、 ,.--! ` 7ァ、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
, " ̄ ̄ 丶、
/ \
ノ゙! / , { / { / } ヽヽハ/^ーァ ちょっとここでこの時点での家族関係を整理
r=' \j |イ/⌒Vヽハ⌒lヽ} j} /´ ┌─────────────────────────────┐
 ̄\ イ j :|fト fハ/ノリ/ │ .│
7レヘ { ゞ'' _ `‐' {/ベ. │ 杉山三郎平(故人)─┬─トモ .....│
く/ /V> __ イ∧ヽ/ │ │ │
\{ { l::lVミVl::l / ∨ │ 幾茂─┬─茂丸─┬─ホトリ(離縁) │
Y\ヾ ∀ シ/ r'´. │ │ │ ......│
| ≧f}≦ |. │ ┌───┬───┬──┬──┤ │ ......│
`ァー∨=∨‐く │ えみ子 たみ子 五郎 瑞枝 峻(故人) 直樹(夢野久作) │
└─────────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
86 :79:2010/03/28(日) 00:57:56.22
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ` 廃嫡問題の背景には以下のような点が認められる
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j 1 父親の茂丸は文弱な直樹をよく思っていなかった
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 2 継母の幾茂はお腹を痛めた我が子に家を継がせたいと思った
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 3 杉山家の周辺にいる人々が焚きつけた
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| | ┌───────────────────────┐
〃 l lュ} ', -、.V/ / | │1 父親の茂丸は文弱な直樹をよく思っていなかった .│
. l| l ' 5iツ ノ ハ| └───────────────────────┘
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、 >> でも触れたが茂丸は美術や文学に熱中する我が子を
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ 苦々しく思っていた
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 00:58:27.16 ID:3JBz5FlG0
シンデレラ状態だな。 92 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:01:47.30 ID:unNuwJI10
しかし金も無いこの家継いでメリットあるのか?
確かに由緒正しい旧家とは言え・・・
政府とパイプがある親父だけど、親父のスタンドプレーだし、親父が死んだらそこまでな気が・・・
そんな家でもお家騒動って泣けるなぁ 88 :78:2010/03/28(日) 00:58:39.72
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_________ __
)三三三 ) ) / ⌒ \
「 ̄ ̄「 ̄ ̄ ̄! | ● ●
r┴―‐┼―┬ー' |⊂⊃ (_,、_,) 直樹は少年時代から『少国民』等の雑誌や単行本などで
{___l____{___ | }
|ニニニニ ニ |:.:.:.| ヽ |\ ノ /| 小説をよく読むようになっていった
|ニニニニ ニ j::.:.:j_ / ( ) \/ ( )
)三三三 ) ) | | 少国民 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____
/ \
/ ─ ─\ >`ー―-. 、
/ (●) (●) \ 両親不在の寂しい少年時代でしたっけ /: : : : : : : : : :ヽ.
| ___'___ | //.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. V 色々な小説を読破できたのも
/ ∩ノ ⊃ / お話の世界に没頭するのも !イ.: 从:.! :.:.:.::.:.:!:八
( \ / _ノ | | V.:.!ハ:ヾ::ヽ::::ノ:::j:ゝ 祖父の教育による高い国語力の
.\ " /__| | 分かるような気がします {:小-ヘ、:ヘ:V/:;イリ
\ /___ / `ー仏-=<_ 影響があったと思われる
イ ヽ\
xく l |: ヽ\
f:::::.ヽL..-―-、___>
|::::::::!\_ /⌒ト-―
89 :77:2010/03/28(日) 00:59:45.29
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ また『路傍の木乃伊』にも彼が中学時代に読んだ本が言及されている
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その中学時代が小説の耽読時代であった。漱石、蘆花、紅葉、馬琴、為永、大近松、世阿弥、デュマ、ポー、
ホルムズ、一千一夜物語、イソップなぞ片端から読んだ。二葉亭、涙香、思案外史、鴎外なぞも漁った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夢野久作 『
路傍の木乃伊』
90 :76:2010/03/28(日) 01:00:28.85
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l } 成績も小説を読みふけるようになってからドンドン下がっていった
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 中学生時の成績
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ ┌────────────┐
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ │一年生 137人中34位 .│
/| l:| | ===| |:l゙ヽ │二年生 108人中43位 .│
/ | l:l l l l::l l │三年生 104人中75位 .│
│四年生 106人中63位 .│
│五年生 106人中79位 .│
└────────────┘
____
/― ―\
/ (一) (一)\ 上の下から中の上
/ U __´____ \
| `ー'´ | 最終的には下の上ぐらいに……
\ /
91 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:01:10.46 ID:WRl/bd2W0
もはやただの下だろ 93 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:02:31.87 ID:unNuwJI10
両立できなかったかw 94 :75:2010/03/28(日) 01:04:04.28
ID:m437+n3o0 _____ ━┓
/ ― \ ┏┛
/ノ ( ●) \ ・
. | ( ●) ⌒) | 中学五年生? 中学は三年で終じゃないのかお
. | (__ノ ̄ /
. | /
\_ _ノ\
/´ | ____
. | / | / \
/― ― \
杉山直樹が中学に入学した明治三十六年の /(●) (●) \
| __´__ |
中学校の修業年限は五年です \_ `ー'´ _/
⊂ ヽ∩ / \
戦前と戦後の教育制度の違いですね '、_ \| |
\ \ / /
95 :74:2010/03/28(日) 01:08:54.48
ID:m437+n3o0 _,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| |
〃 l lュ} ', -、.V/ / | そんな文学に熱中する直樹を父茂丸は冷めた目で見ていた
. l| l ' 5iツ ノ ハ|
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、 教育制度に批判的だったこともあって直樹が慶應義塾の文科に合格した時も
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ 余り喜ばなかったという
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌───────────────┐
│ 合格したとの報告を聞いたとき .│
└───────────────┘
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄\
/ _ノ ⌒ / ヽ、_ \
| ○-○ (●)(● ) |
. | ___(_::::::)___ (__人__) u |
| \___ へ__/ ほう よかったな (`⌒ ´ |
. | ∩ ノ ⊃ . { |
/ ./ _ノ { ノ
(. \ / ./ │ ヽ ノ
\ “ /___| | ノ ヽ
. \/ ___ / / |
┌─────────────────┐
│ と軽蔑するように苦笑しただけだった │
└─────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:10:21.23 ID:3JBz5FlG0
親父さんは色々知りすぎてシニカルになってるな。 97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:11:22.25 ID:unNuwJI10
中学までで十分!って言う親父だもんな 98 :73:2010/03/28(日) 01:13:26.12
ID:m437+n3o0 ┌────────────────────────────┐
│2 継母の幾茂はお腹を痛めた我が子に家を継がせたいと思った │
└────────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
< 奥さん、直樹坊ちゃんでは杉山家の跡取りにふさわしくありませんよ |
\_____________________________/
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| 杉山家の跡取りには貴方の子、利発で快活な五郎さんが相応しい >
\_____________________________/
γ´/ 丿ヽ
-‐ '´ ̄ ヽソ ` 丿
/ //" `ヽ ヽ ヽ\
//, '//レ´/ノ ヽハ `、ヽ
〃 {_{ ノ u ヽ、 リ| l │ i
レ!小l (●) (●)从 |、i| うーん、お腹を痛めた我が子に家を継がせることができるのなら……
丿ル| 、_,、_, |ノレ リ
ヽ ∩ノ ⊃ . j /
/ _ノ_, イ_
. / ̄ / / |‐‐ \ ←杉山幾茂(夢野久作の継母)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:14:22.72 ID:q7zVvK6B0
当時の慶応って帝大とかと比べてどんなもんだったの?
ちゃんとした数字は分からないのですが、「国立ではないが私立ではピカ一」との認識だったと思います
当時の県立中学校卒は今の国立大学卒よりも数の少ないエリートだったそうです102 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:15:20.03 ID:unNuwJI10
うぜえお手伝いだかなんだかの取り巻きだな、おい。
継母が率先してじゃないとか、余計に泣ける 104 :72:2010/03/28(日) 01:17:48.65
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 幾茂とその周辺は文弱な直樹を廃し、幾茂が産んだ子
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 三男の五郎に家督を継がせようと試みた
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/ (次男峻はこの時既に故人
>>84参照)
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
____
____ / \
/ \ /─ ─ \
/ ─ ─\ / (●) (●) U \ 実の父からは理解されず
/ (一) (一) \ | __´____ | 継母からは疎まれ…
| (__人__) | \ ⊂ ヽ∩ <
/ ∩ノ ⊃ / | | '、_ \ / ) 夢野久作は
( \ / _ノ | | 誰だって我が子が可愛いに決まってるお | |__\ “ / 孤独な人だったのですね
.\ " /__| | \ ___\_/
\ /___ /
105 :71:2010/03/28(日) 01:19:39.02
ID:m437+n3o0 ┌──────────────────┐
│3 杉山家の周辺にいる人々が焚きつけた.│
└──────────────────┘
_____ ━┓
/ ― \ ┏┛
/ノ ( ●) \ ・
.| ( ●) , | これはどういう意味なのでしょうか
.| /
.| '~ / 他人が家の事情に口をはさむなんて
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
| / \_ノ
____
/ \
/─ ─ \
周辺にいる人々ってのも何の事だか / (●) (●) \
| (__人__) |
ちょっとピンと来ないお \ ⊂ ヽ∩ <
| | '、_ \ / )
| |__\ “ /
\ ___\_/
106 :70:2010/03/28(日) 01:22:37.15
ID:m437+n3o0 _,. -―- .、
/: : :::::: : : : : : : :.`丶
/ ::::::::::::: : : : : : : : : : : : \
/:::::::::::::::; :' :/: : : : : : : : : : :'
ー‐ァ:::::::::::::::/:/:::::/; ' : : :/: : i: : ',
i:::::::::::::::/:/:::::::/:::/::::///::::,'::!:!:',
|'|::::::::::/:/:::::::/:_///:::,'/:::.!:!::l
!:::;::::r/::::// ァ=ミ/ヾ::/,rト ノ |i} この時期の杉山茂丸は政財界、軍部、玄洋社等に顔のきく
ハ;}::://:::/.| {:::リ/ ' ,イソ/'!/ノ
ハN:|i::::::::i| `¨ ‘,〃::/,/ 国士として名の知られた存在であった
_八!|:::::i| - ィ}}/ ′
_/:::ヽ !ヽ|´丶r≦::/ノ
/ー- 、: \ ':!ヽ\j/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,,,,,,,,,,,,,,,,|゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚l|l''''''''''''''''''l :〃 ;),, l゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚|゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚|
l:l'''l |:::::::::::::::::l|l | ̄| _ l:;:〃:;;). . |::::::::::::::::::::::|::::::::l| ̄l| そんな国士杉山茂丸を利用しようと企む連中……
l:l,,,l |:::::::::::::::::l|l |_|:| : |:l: /~~゙ヽ' |::::::::::::::::::::::|::::::::l|κl|
l:l,,,l |:::::::::::::::::l|l : ::.l: ヽ;;:;丿,,,,-' |::::::::::::::::::::::|::::::::l|ξl| 総理大臣、代議士から料亭の女将、相撲取り、
""""|:::::::::::::::::l|l ._,,,,,,,,,,,,、lr''''''゙゙゙~ |::::::::::::::::::::::|:::;;;,.l|πl|
.llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll,!'''゙゚゙"ヾ l| l| 俳優、書生まで この頃の杉山家には
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .'l_ :;:;::゙:;|l" ̄:;:ヽ
∧_∧ `─"' ヽ_,,丿 多様な人々が出入していた
∧_∧ ∩, .∧_∧ ( )
( ´∀`)丿 (´∀` ) ( O ) ∧_∧
⊂ 丿 ⊂ つ │ │ │ ___(∀` )
ノ γヽ ( ( ( (__ (__) |⊂ ○ ,)
(__丿\__ノ (_(_)  ̄( ( (
(__)_)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:23:40.08 ID:unNuwJI10
相撲取りだけなんか違和感があるなwww 108 :69:2010/03/28(日) 01:25:52.47
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l } そういった人々のおべっか、嫉妬、勢力争いなどによって
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ 妙な空気が杉山家に持ち込まれた
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 杉山家そのものがおべっかを使う連中から
/| l:| | ===| |:l゙ヽ ちやほやされたこともあった
/ | l:l l l l::l l
____
/ \
/ ─ ─\
/ (●) (●) \ なるほど、そういった人たちが杉山家及び杉山茂丸に影響力を持とうと
| ___'___ |
/ ∩ノ ⊃ / おべっかを使い、家庭内の問題に首を突っ込んだと
( \ / _ノ | |
.\ " /__| |
\ /___ /
109 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:26:45.62 ID:unNuwJI10
うざすぎる。親父が家族を引き離してたのもうなずけるな。 110 :68:2010/03/28(日) 01:28:51.93
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ 廃嫡問題のせいで継母幾茂と微妙な関係になった直樹だったが
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\ 後に彼は自分の息子達にこう語っている
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(ー)
. | (__人__) 俺は幼い頃から体が弱く、よく病気をしたものだった
| ` ⌒´ノ
.l^l^ln } そんな時はいつも、幾茂お母さんがお祖父様やお祖母様のお叱りを受けながらも
. ヽ L }
ゝ ノ ノ 看病してくださったものだ
/ / \
/ / \
. / / |ヽ、二⌒)、
ヽ__ノ
111 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:29:55.03 ID:unNuwJI10
根っから嫌ってたわけではないんだな。
イイハナシダナー 112 :67:2010/03/28(日) 01:32:40.54
ID:m437+n3o0 γ´/ 丿ヽ
-‐ '´ ̄ ヽソ ` 丿 ┌─────────────────────┐
/ //" `ヽ ヽ ヽ\ │厳しいお爺さまお祖母様の叱責にも黙って耐え .|
//, '//レ´/ノ ヽハ `、ヽ │ │
〃 {_{ ノ u ヽ、 リ| l │ i │よく尽くし、家の中のことをよく働いたものだった |
レ!小l (●) (●)从 |、i| └─────────────────────┘
丿ル| 、_,、_, |ノレ リ っ
ヽ j /. っ
ゝ ,、__, イ っ
.y' |ヽ/ | \
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .|
! (__人__) | 俺がここまで生きてこられたのは幾茂お母さんのおかげだ
, っ `⌒´ |
/ ミ) / 息子たちよ、お祖母様をくれぐれも大事にせいよ
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
114 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:36:27.29 ID:Z6V3P7Ji0
なんという美談
115 :66:2010/03/28(日) 01:36:40.68
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ 異母弟五郎は
>>84から一年後結核で亡くなり
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ 廃嫡問題も一時棚上げになるがこの一連の騒動で
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_
/| l:| | ===| |:l゙ヽ 直樹の心は色々と傷つき、苦悩したものと思われる……
/ | l:l l l l::l l
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| | 慶應義塾も入学してから二年で中退
〃 l lュ} ', -、.V/ / |
. l| l ' 5iツ ノ ハ| 福岡に帰郷し、買い取っておいた土地で農園を始めることとなった
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
117 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:37:48.67 ID:unNuwJI10
イイハナシダナー
けどそのいい話にケチ付けられたわけか・・・
中退して結局農業かw迷走してたんだな 118 :66:2010/03/28(日) 01:39:58.99
ID:m437+n3o0 ___ ___
/ \ / ヽ、_ \ この当時の大卒者の割合は
/ _ノ '' 'ー \ 慶應をやめちゃうなんて /(● ) (● ) \
/ (●) (●) \ /::: __´__ :::::: \ 今よりよほど少ない
| (__人__) | ちょっともったいないお | l^l^lnー'´ |
\ ` ⌒´ / \ヽ L / エリートだったでしょうに
ゝ ノ
/ /
_,. -―- .、
/: : :::::: : : : : : : :.`丶
/ ::::::::::::: : : : : : : : : : : : \
/:::::::::::::::; :' :/: : : : : : : : : : :'
ー‐ァ:::::::::::::::/:/:::::/; ' : : :/: : i: : ',
i:::::::::::::::/:/:::::::/:::/::::///::::,'::!:!:',
|'|::::::::::/:/:::::::/:_///:::,'/:::.!:!::l
!:::;::::r/::::// ァ=ミ/ヾ::/,rト ノ |i} 大学を中退したのは文弱な我が子を鍛え直そうとした
ハ;}::://:::/.| {:::リ/ ' ,イソ/'!/ノ
ハN:|i::::::::i| `¨ ‘,〃::/,/ 父茂丸の意向もあったそうだが、直樹自身
_八!|:::::i| - ィ}}/ ′
_/:::ヽ !ヽ|´丶r≦::/ノ 煩わしい家のことから離れたいと思ってのことなのかもしれない……
/ー- 、: \ ':!ヽ\j/
// ̄`丶\\\-―‐|lヽ
119 :67:2010/03/28(日) 01:43:38.27
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___
/i~i~i~i#::/______/~ヽ个卅 _
"''"'''''''''''| 田 | 田|'"''"'''' /,.ノ 、
~~''"''~"''"''"^^^^'"""'"''"'~~' l (● ●
- - - - - - - - - - - - - - - - | (__人)
″″″/″″″″″″″″' / ヽ ノ
″″' /″″″″″″″″''./ ″ / ヽ ヽ
″″/″″″″″″″″' / ″ / 0メ
/ /,>" 〉 \_ ザックザック
(_ノ (__) /:::/
ノ・ ./∴
┌──────────────────────────────┐
│大正二年 直樹は福岡へ戻り、杉山農園にて果樹栽培、農作を始める |
└──────────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_
.ノ 、 ヽ
● ●) l ┌──────────────────┐
(人__) | │が一年後には農園を出、放浪生活に入る │
ヽ ノ. └──────────────────┘
○ ヽ \
| と_) \_
ヽ y 人 キュムキュム /:::/
と,__/└' ))) ノ・ ./
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
120 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:45:34.62 ID:iq9sl6Jg0
ちょwww 122 :65:2010/03/28(日) 01:46:10.24
ID:m437+n3o0 ____
/ \
/ _ノ ヽ_ \ せっかく新生活を始めたのに
/ (●) (●) \
| __´___ | なんでまた放浪なんて……
\ ,/
/ \
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| | 農園での人間関係や、異母弟五郎の死後もなお
〃 l lュ} ', -、.V/ / |
. l| l ' 5iツ ノ ハ| 他家から養子を迎え直樹を廃嫡してしまおうとする幾茂周辺の動きに
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、 彼は悩まされていた
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ
f-r'/| l | |
| !′| | |___{
123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:46:21.56 ID:FuNuVH4o0
家族のために突き放した父親と、その父親に翻弄されて迷走した息子か
複雑な関係だけどイイハナシダー 124 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:47:01.06 ID:ZXsmmIE30
五郎とか、大人になってからの弟だとかわいがってただろうに可哀想に 126 :64:2010/03/28(日) 01:49:32.00
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 一度色々なものから離れて
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 自分を見つめ直したいと思ったのかもしれない
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 俺は死んだつもりになってやり直してみようと思って
| ( ー)(ー)
. | (__人__) 東京深川の工業地帯や貧民街で日雇い労働者になったりした……
| ` ⌒´ノ
. | nl^l^l
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く
/ ヽ \
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
127 :63:2010/03/28(日) 01:52:03.93
ID:m437+n3o0 , -=―=―- 、 _
〃⌒>'´ / 丶`ニ=‐'
./ ,′// , ´ / j } ヽ \
/ l | i l / /// ,イ ハヽ ヽ
ノ,イ八 l レ_j/∠∠///∠Ll }ヘ
<ノ .∧ l ムrt=k` ィ=、ルレ′j
/ イ Vヘ. ヽVr! jr/ムイ{ ……とこう述懐している
´ W^{ゝヘ ハ.ヽヽ _ ' /〈リヽ
j八 }ヽ ヘ、 j`<ミ\
リ朽\!`{7|:::::::::>ミ;>,
ノ \- 厶]::::::::f }::/:/
r=< V三|:::::::::| |/:/
/‐-、 \ ∨メ、::::ノ V、
. /_j , X \ ヽ {´ /
____ ___
/ \ / \
/ ─ ─\ /_ノ ヽ_ \ 課題なんて忘れて
/ (●) (●) \ /(= ) (= ) ヽ
| ___'___ | なるほど 自分探しの旅ですか | ⌒(__人__)⌒ | やる夫も自分探しの旅に
/ ∩ノ ⊃ / \ `⌒ ´ /
( \ / _ノ | | / \ 出かけたいお……
.\ " /__| |
\ /___ /
128 :62:2010/03/28(日) 01:53:11.97
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ \ ヽ
/ / / l l ヽ \ }
', / / l l ヽ \ /
ヽ、 / l l _,r‐'´
`ー‐─┬────r'´| ┌───────────────────────┐
. | (__人__) │ │一年の放浪生活の後、大正四年こんどは .│
. ヽ `⌒´ /. │ │
ヽ / │東京喜福寺(曹洞宗)で剃髪、出家 泰道と改名する .│
/ i r‐/ />、 │ │
_, ´ / |/ / / /´`ヽ、. │翌年には雲水として各地を行脚した │
/| / / / / / / ヽ └───────────────────────┘
/ レ| i / / l l }--、 ヽ
ト ̄`i / / i´ ̄ 〉 r┤ ', ヽ
| 〉ュ' | | _〉={ l | ', |
|く `ヽ ミミヽ─-、{  ̄lヽ | l ', l ←杉山泰道と改名
| }三/ f} fiく´  ̄「_ノ l ノ l
ヽ | /ー ヽi l l ヽ. |ヽヽ.|/ |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____
___ /― ― \
/)/─ ─\ 出家とは…… /(●) (●) \ しかもまた放浪を
/ .イ ' (●) (●)\ / (__人__) \
/,'才.ミ). ___'___ \ また思い切ったことをしますね | ` ⌒´ | 初めているお
| ≧シ' | \ /
\ ヽ / / \
129 :61:2010/03/28(日) 01:54:42.23
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___
/i~i~i~i#::/______/~ヽ个卅
"''"'''''''''''| 田 | 田|'"''"''''
~~''"''~"''"''"^^^^'"""'"''"'~~'"''"''"''~
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
″″″/″″″″″″″″' / ″″″″″″″″
″″' /″″″″″″″″''./ ″″″″″″″″″
″″/″″″″″″″″' / ″″″″ ″″″″″
~~~''""''"''"''"''"''""''""''~~"'_"''"''"''""''""''""'~~~"''"'
''"''"'' /,.ノ 、
. l (● ●
. | (__人) ┌───────────────────┐
. ヽ ノ │ その一年後には還俗して杉山農園に戻った. │
/ と) └───────────────────┘
(J 〈
ヽへ__く
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____ ____
/ \ / \
/ ─ ─\ /─ ─ \
/ (一) (●) \ なんだかこの数年間は / (●) (●) \
| U ___'___ | | (__人__) | ジョブチェンジしまくりだお
./ ∩ノ ⊃ / 展開が早いですね \ ⊂ ヽ∩ <
( \ / _ノ | | | | '、_ \ / )
.\ “ /__| | | |__\ “ /
\ /___ / \ ___\_/
130 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:54:55.89 ID:iq9sl6Jg0
インドアな人とばかり思っていたが・・・意外と活発なんだな 131 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:55:38.99 ID:Z6V3P7Ji0
この腰の据わらない展開の速さは、作風にも表れてるなw 132 :60:2010/03/28(日) 01:55:46.01
ID:m437+n3o0 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大正二年 大正三年 大正四年 大正五年 大正六年
━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━
慶応中退 放浪開始 出家 改名 各地を行脚 還俗 農園に戻る
杉山農園へ
_____________________________________
.. ____
/ ― -\
. . / (●) (●)
/ (__人__) \ 一年周期で重要イベント発生でもしたのかってレベルだお
| ` ⌒´ |
. \ /
. ノ \
133 :59:2010/03/28(日) 01:56:49.53
ID:m437+n3o0 /, | /:: , l:: i::. }::ヽヽ::.ヽ \
.// .:! :| : /:::/:/::/i: /: !: }i:',ヽ:|
i,i .::| :|: :: !,/_ム/_ l:/::: l:: !l::! i::!
. ! l .: : .::::| :i:.:: レ',ソ,_/`!::/i:/ i:! |
. !.:! ::. : .:.::/´', !::: | ! ヾ.i´:i` !/ / !
i:l', :::::. :. ::. ::〈 、'_゙il::::. |.| j_ソ ゙、_
ヽヽ、:::::::::. :::.::::\ニ',::. ii::! ノ 当時の心境を後に彼はこう語っている
ヾ、i::::l::::l::::',:| ',::. !',! ィ´
i|ヾ:!:::i::::/ヽ ヽ. l 丶. /
ノ /ii/lノ ヽ:r‐y┬ '
イ'"`'‐- 、 / ヽl/ '
/ \__{ヽ、
/_,, -‐‐‐-- ,,_ \_,ヽ‐、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 俺は当時杉山家を取り巻いている連中のいやらしさにあいそが尽き
| ( ー)(ー)
. | (__人__) 世を捨て、一切を捨てるつもりで僧侶になった
| ` ⌒´ノ
. | nl^l^l
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く
/ ヽ \
134 :58:2010/03/28(日) 02:00:49.01
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .|
! (__人__) | しかし考えてみると、それも結局俺の自己満足であり
, っ `⌒´ |
/ ミ) / 自分のみを清くしたいというエゴイズムであった
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●)
| (__人__) 仏法というものは人間が生きている、自分が汚い
| `⌒´ノ いやらしいと思っているものの為にある
| ,.<))/´二⊃
ヽ / / '‐、ニ⊃ その中に生きているものの為にある、ということに気がついた
ヽ、l ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉 それは宗門にあろうと俗世にあろうと変わらぬものだ
:::::::::|_/ヽ. /|||||゙!:゙、-、_
:::::::/´∨/`ー'〉゙||i l\>::::゙'ー、
:::y′.: ',ゝ、_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
/: ://: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
135 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:01:45.89 ID:dlYl7CBy0
久作かっこえええええええええええ! 136 :57:2010/03/28(日) 02:05:05.20
ID:m437+n3o0. / ̄ ̄\
. / ノ \ \/`i
| (●)(●)./ リ 自分が汚い、いやらしいと思うものから逃避しては仏法はありえない
. | (__人__)..| /
| ` ⌒´ リ ヒ
. ヽ // ,`弋ヽ その中に生きてゆくことに仏法はあるのだと考え
__ ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l よし、その中に生きて、やってやろうと考えたのだ
/ : : :介〈 `ー〈::....ノ Vヽ
| : : : : ::〈 「`ヽ_ー 、 `ヾ_/ //:|
| : : : : : /: | {::::} フ-、`ー┴‐- │
| : : : 〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____ ____
/ \ ( ;;;;( / \ やる夫くん
/ _ノ ヽ__\) ;;;;) こう言ってのけられる泰道は立派だお /─ ─ \
/ (─) (─ /;;/ /(●) (●) U \ 戦わなきゃ
| (__人__) l;;,´| やる夫なんて今すぐにでも二次元の世界へ | __´__ | 現実と…
./ ∩ ノ)━・'/ 旅立ちたいのに…… \_ `ー'´ _/
137 :56:2010/03/28(日) 02:08:14.75
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/::::::::::::::::ヽ::::::ヽ `/)乙二ス、 ヾ>、 ‐_,.ィ"l´
/:::::::::::::::::::::::::::ヽ::::;/ ーンノハヾ,!} r ̄`ヽ\.´....,!/ |`ヽ
/::::::::::::::::::::::::::::::/^i´ /(_, イヽ / ..... :`ヽ、\,/ / .ヽ
. i:::::::::::::::::::(⌒/:::::::::::l,r‐ァ''";!/:i, |:::::::゙! / ..:.. \../ . : ,|
!:::::::::::::;:、-'":::::::::::::::::::|::/::::;:':{;::::i, |:::::::::} ! .. :.. \ | | ←鎌田クラ(23)
}::::::;:::'::::::::::::::::::::::::::::::::|'::::;:':__:i;::::::i, l;:::::::: : :. i .. :.. ヽ| |
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:;:':::|ll|::l;:::::ヽ.',:::::;! ヽ _,,..、..、-‐ 'i ゝ,
,!:::::::::(⌒)::::::::::::::::::::::::::|::::::|ll|,r;|:::::::::'J:/ ゙i ..ノ .: )
. |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::|ll|/::|:::::::::::iノ ``ヽ、 __,,. r=ニ=ュ __
┌────────────────────────┐ r=''.,,´__::::::( )::::`_,''=ォ
│ 還俗した翌年の大正七年 小学校教諭の鎌田クラと結婚 | └- 、.,,__`''''ー:--:‐''''´ _,. -┘
└────────────────────────┘. |::::::::_`::''''┬t‐‐'_"::::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ ____
,r'ァ' ,r// , , `! / \
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ /─ ─ \
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| | / (●) (●) \
〃 l lュ} ', -、.V/ / | 時に泰道二十九歳 | (__人__) | 魔法使いギリギリだお……
. l| l ' 5iツ ノ ハ| \ ⊂ ヽ∩ <
ヽトlヽ` /,.-シイ″ 当時としては晩婚の方だった | | '、_ \ / )
`¨仁'-'ユ、 | |__\ “ /
,r=ニ.ヽ、 l \ ___\_/
_,.. イ ヽ`、 ヽ ちなみにこの時まで童貞だったらしい
138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:09:05.63 ID:unNuwJI10
いやはや、やっぱ出来が違うな 139 :55:2010/03/28(日) 02:11:28.89
ID:m437+n3o0 ___
/ \
/ ⌒ ⌒\ 遂に家庭を持ったのですか
/ ( ●) (●)\
| ___´___ | 大黒柱として農園経営にも力が入ったことでしょうね
ヽ、 `ー '´ /
,. :-:.' ー ' ¨ :.ゝ.、
,.:´: : : : : : : : : : : : : ヽ.
,.': : : : : : : : : : : ',: : : : : : ヽ、
,':.:;':.:.:;'.:.:.;'.:./.:;'.:.:|i:';:.:.:.:.:.:.::`、`ゝ
,':.:.i:.:.:.i:.:/i:.:/i:.:ハ:.:l:i:.:.i:.:i:.:.:.';.:.:',
/イハ:!:.:.:l:/ i/ ノノ ノリリハリ:!:i:.:.!:.l
i/!:.:!:.:.;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;l:.!:ハ!
∨|:.:.! ノ/i/ノ
ヘ!:| ノ!/′
ヾ!>ー- -- <イリ ところがその農園経営は順風満帆にはいかなかった
(ヘ:::::\i=//:::::/)
{;;\::::::!n/:::::/;/
ト、;;\;;ii;;/;;;/′
/;;;;ゝ;;;;∨;;;;;;;入
(;;;;;(⌒)∨(⌒);;;;)
`´ ̄` ̄ ̄´ ̄´
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:12:31.92 ID:unNuwJI10
29まで童貞だったのかw
また波乱か・・・ 141 :54:2010/03/28(日) 02:15:32.41
ID:m437+n3o0 _
. ,,-‐'''´ `―-、
. ,/ ヽ
ィ'/ 、 、 ヽ
i.,, i /.,、 i、 i l .l .l
"ll、 l、トTヾ lやヽ,T l ,,l 農園では水密桃、枇杷、栗、蜜柑などを扱い、福岡の青果市場に出荷されたが
`l.lヽらフ ` 'ちフ'l /,), /`
'.l l''_, ─、_''.,ィ /,/!/ 当時の福岡ではまだ食卓に果物を載せる時代ではなく
!r'# # #Y〃i
. ム # # rク、 .l また、大抵の家の庭には蜜柑や梅、栗の木を持っていた時代であった
'- ケtォャl、 __,,)
. ャ''ヽィ.' !l__,λ_
`i--.ォ''~~'´>_) )
`´ `‐ ´ ̄ `´
/ :. ィ.;:.:.:.:.:.:.:ヽ
イ:.:.:.:/-|/|∧:;、:.:.〈 ___
リ:.:./ ● く!:,:.:..、 / ヽ、_ \
l:.:.l ●/:./ ̄ /(● ) (● ) \
vヘ - ノ:./ そのためいかに優れた品種でも /:::⌒(__人__)⌒::::: \
_,-+ 匸ヘ/V | l^l^lnー'´ |
,《 ヒ⌒j 》、 商売にならず農園経営は失敗だった \ヽ L /
l::\ l /∥::l ゝ ノ
|:::::::ト,Vイ:::::| / / そういえばやる夫の田舎の家にも
|:::::::l介l:::::::| 庭に柿の木があったような……
142 :53:2010/03/28(日) 02:18:51.25
ID:m437+n3o0 -─:. .. .. ‐-..
r ´:. :. :. :. :. :. :. :. .:ヽ
/:./:. :./:./Y:. :. ト:. :ヽ:.>
/:. /:. :..イ/ノ ):. ノ─∨l´
{:. :|:. :. : j fテ〒 fテト{:.:| さらに、農園の管理人が博打に手を出し、農園の金を使い込み
∨r!:. :.:.:|. !::i:リ l:i:リ |:.リ
ヘ! ',:. :. i - j:リ 杉山の名で勝手に借金を作り、苦境に陥っていた
)入:. :.l、 ─ . ィ:/
V\ヘ(` ‐-rァ´
/`ー-、〈ヽ、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_________
/ 'r r.r.r.i
/ | | | | |
/ u .ノ.ノ.ノノノ
ハ_ノ ヽ、__ / /ノ
/ (●)(● ) .( l ヽー―ー-、
/ .(__人___) ム イ r ヽ
./ / ヽ`⌒´ | .l / 、 l
/ / 八_ 、__ /l | ,' l l
. / ,' ヽ| | ノ ハ l
/ .l ∧ | レ' ノ l
/ l ノ ヽ | | ノ }
∧ / ,〆 ヘ l , ' l
┌────────────────────────┐
│その責任を擦り付けられた泰道は後始末に奔走したが .|
│農園経営は破局へと向かっていくことになる │
└────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
143 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:19:07.75 ID:unNuwJI10
今みたいに運輸経路もないしな。
あれ?農家どうしようもなくね? 144 :52:2010/03/28(日) 02:22:06.24
ID:m437+n3o0 ____
/ \
/ _,ノ \ \ 晴耕雨読の農園主生活とはいかなかったのですね
/ (●) (●) \
| ' | / ̄ ̄ ̄`‐-、
\ ⌒ / / / ヽ \
ノ , '/ ' ヽ 、 ヽ
〃 {八人 八ハ人ハ l .|
. {ハ人{`レリ Vヽノリ | l リ
この頃、農園経営に苦戦しつつも、父茂丸が刊行していた 从 リ● ● 从 |ノハリ
『黒白』という雑誌で旺盛な執筆活動を始めている |ヘ⊃ __ ⊂⊃ | |/
. . レ/⌒l,、 _ ,イァレ
彼の生活はそのうち晴読雨書の生活になっていった . / /::|三/::// ヽ
| l ヾ∨:::/ ヒ::::彡,
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ \
|:::::: |
. |::::::::::: | ┌─────────────────────────────┐
|:::::::::::::: | │ 大正七年九月には最初の著作集『外人の見たる日本青年』を上梓 │
. |:::::::::::::: } └─────────────────────────────┘
. ヽ:::::::::::::: }
ヽ:::::::::: ノ
/:::::::::::: く カキカキ
-―――――|:::::::::::::::: \ ―┃ )) ――――
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:23:23.67 ID:unNuwJI10
親父は雑誌までだしてたのか。
もう親父完璧超人すぎるだろ
福岡県立図書館にある杉山文庫に杉山家ゆかりの資料が色々収められているそうです 146 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:23:54.22 ID:dlYl7CBy0
久作の文才は親父譲りだからね 147 :51:2010/03/28(日) 02:25:18.74
ID:m437+n3o0 ─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄ この本では登場人物の白人が、日本の国体論を語っているが
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ
/ヘ:. :{、 。 ノ./ これは泰道の日本論とも捉えることができ、なかなか興味深い
W>j ‐-t<iノ
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、
j Y、:.:.l : :/.彳/! 〈
. へ≧! \ミ|::/彡/ k≦_〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
……日本人の理想としている「国体」は世界第一でも、実際に行って居る「政治」は世界第一ではありませぬ。
日本は君主立憲政体です。立憲君主政体ではありませぬ。これを間違えて考えている様に思えます。……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『外人の見たる日本青年』より
148 :50:2010/03/28(日) 02:28:10.13
ID:m437+n3o0. __ ___
|ヽ >‐:::´:::::::::::::::::::::::`::-..、
|. ´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、__ヽ---ュ
/::::::/:::::::::/:::::::::::::::ヽ::ヽ:::::::ヽ ,.∠ /
_,._'´_/:::/::::::/::::/::::::/::::!:::::::'::::::'.::::::::', ;.∧
/::::::/::::::/:::::;|::::::∧:::|';::::::|::::::!:::::::::l '/::::i
|:::::::!::::_/」_::ハ::::! ';::! ';::::|';::::!:::::::::| /:::::::!
|::::/|:::/ ';:l. ';::| ヾ¨ヾ:|`';:|:::::::::j::::::::::::',
|:::l. l:::| z=t=ミ、 ヾ ,.z:=t、.'|::::::::;'::::::::::トヘ
ヽl. Ⅳ', |:::::」 |:::::」 |::::::/::::::;l:::l この「君主立憲政体」という言葉は
. /:|:::l 弋tソ 弋tソ |::::/:/l:/ V
'´ l:::ト、 ''' |::/:/ ′ 父親の杉山茂丸の著作からも見て取ることができる
ヾ! lン 、_ -__ ィ/:/|/
. r'ヘ., ‐ 、. _ ,r‐/__ /ヽハ/ シ
. |', ', / ヽ /| | ./ ./゙i ,、 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
. | \}' 彡 ´ |.| | / / | / ‘. 日本は決して範を英国に採ってはおらぬ。(略)
. | .| |´ ⊥.| l//__ | / | 我国の憲法は範を祖宗の遺訓に取つておる。
', ! ! l l^¨¨´ / | / ノ 故に君主立憲政体である。
. ヽ| | ヽ..ノ‐ォ┬一' | / ,フ 世界に何処を探しても類範はないのである。
ーー ´,r'⌒', く.|_j l/ ∠ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/、 ./ ', ` ー‐ ´| _ノ 杉山其日庵(茂丸の号)盲訳 『デモクラシーと寡頭政治』より
/ オヽ- /ヽ', >-- ´
/ // ./ ` ー-‐ ´
ー'´ / /
`゙´
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:31:28.21 ID:dlYl7CBy0
文字通り幕末尊攘派の生き残りみたいな連中だからなぁ。
玄洋社連中は 150 :49:2010/03/28(日) 02:31:41.64
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/ 杉山茂丸は自身の王政論をこう語っている
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
. / ノ \\/`i
| ○-○ ./ リ 俺のいう王制とは、古にかえる王政である
. | ___(_::::::)__.| /
| \___ へ__/リ ヒ
. ヽ // ,`弋ヽ 天智天皇の御詠にもあるだろう
__ ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l
/ : : :介〈 `ー〈::....ノ V 「秋の田の刈穂の庵のとまを荒み 我が衣手は露に濡れつつ」
| : : : : ::〈 「`ヽ_ー 、 `ヾ_/ //:|
| : : : : : /: | {::::} フ-、`ー┴‐- │
| : : : 〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|
154 :48:2010/03/28(日) 03:00:06.79
ID:m437+n3o0 ┌──────────────────────────┐
│天智天皇が宮居していた木の丸殿は .│
│陛下の御袖が夜露に濡れていたほど質素であったのだ .│
└──────────────────────────┘
.:;,:.
.; . ,.. ´ ` 、 :;ゞヾ
' ;::, / \ ,. ' ` 、 ,;ミヾゞミ
' ;: : ' /:::::::::::::::\ ,. ' ..⌒ ... ~^~...` 、 'ゞミヾミ
:; : ; : .; /::::::::::::::::::::::::::::\ ..:.:.:::.:::::.:.::.::::.... ` 、 ;:ゞ彡;ゞ
; :; ' ; : /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\ :::::::::::::::::.:::.::..:.:::.:..:.` .、 ;ゞヾヾゞ;
', ; .; ' | □ □ | ::::::.:::::::::::.:::::::.::.::::....:......゛ゞツ;ミ;;ソ
! i! | □ □ | .:.:::::::.:::::::.:::::::.:.:.:.::..:..:..:......:..:.:li l !
l i ! ][][][]______|_ ::...::.::::::::.::::::::::::.:.:..:..:........::..::.::i: l!i ::~^"''''' ー - -
'"^''"'''~''"'"'"^"^^^'^'""'' _||_ _||_└i'"''"""'''"^"'^'^'"^"'""'"^'''^^''''''^"'~^^''^""^^'"^~^
.:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. :
. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
. .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . .. . ..
┌────────────────────┐
│ 宮垣も低く 民百姓との間に隔たりはなかった │
└────────────────────┘
156 :47:2010/03/28(日) 03:06:02.49
ID:m437+n3o0 ____
/@ @ @ @ヽ ┌─────────────────────┐
/@/ ̄ ̄ ̄`ヽ@ヽ │ それで百姓が早朝野良に往く時、宮垣の外より │
/ / | | └─────────────────────┘
| / ⌒ ⌒ | @| /ヽ
|| (⌒) (⌒) | | / ヽ
/ |@| ヽ/〉 ノヽ
/ | | //ヽノ / 上様、お早うございます
{ / /|// `
ヽ、 ノ / // ┌──────────┐
ヽ``ー――‐''"ノx//x| │ と ご挨拶を 申し上げる |
 ̄/○\ ̄x //x| | └──────────┘
.; . ,.. ´ ` 、 :;ゞヾ
' ;::, / \ ,. ' ` 、 ,;ミヾゞミ
' ;: : ' /:::::::::::::::\ ,. ' ..⌒ ... ~^~...` 、 'ゞミヾミ
:; : ; : .; /::::::::::::::::::::::::::::\ ..:.:.:::.:::::.:.::.::::.... ` 、 ;:ゞ彡;ゞ
; :; ' ; : /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\ :::::::::::::::::.:::.::..:.:::.:..:.` .、 ;ゞヾヾゞ;
', ; .; ' | □ □ | ::::::.:::::::::::.:::::::.::.::::....:......゛ゞツ;ミ;;ソ
! i! | □ □ | <よう稼ぐ男よ
l i ! ][][][]______|_ ::...::.::::::::.::::::::::::.:.:..:..:........::..::.::i: l!i ::~^"''''' ー - -
'"^''"'''~''"'"'"^"^^^'^'""'' _||_ _||_└i'"''"""'''"^"'^'^'"^"'""'"^'''^^''''''^"'~^^''^""^^'"^~^
.:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. :
. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
┌──────────┐
│ と陛下は仰せられる .│
└──────────┘
157 :46:2010/03/28(日) 03:11:47.94
ID:m437+n3o0 , : ´  ̄`゛ :: .
,::´:,::':::::::::::::::::::::::::\
.:::::/:::::,::::::::,:::::::、:::::、:::゙:.
.|:::::i::::::|i:::::_||::::::_|:::::,|i゙l::l
|:::::|::::::|(●) (●)|::::|:::|
|:::::|:::::_| _' j:::::| `
|:::::|:´:|、_ (_.ノ _ノ:::i ` 上様、お早うございます
|:::::|:::::{´ ヽヽil、:::|:::::|
|:::::|:::::| ヽ. // ',:|:::::|
|:i|:|:::::| |┴─i:|:::::|
|:||:|::,i'l .|.__||,、i'|
|| |ッ',__|:┴─イヽ. ┌──────────────────┐
| |:{ lェrl| |ィ´ │と、ある日娘が挨拶をして行き過ぎると .│
ゝ /| | └──────────────────┘
|V | |
| | |
|__|___,|
{ーイ リrヘ、
`ー' .`ー"
158 :45:2010/03/28(日) 03:17:08.97
ID:m437+n3o0 .:;,:.
.; . ,.. ´ ` 、 :;ゞヾ
' ;::, / \ ,. ' ` 、 ,;ミヾゞミ
' ;: : ' /:::::::::::::::\ ,. ' ..⌒ ... ~^~...` 、 'ゞミヾミ
:; : ; : .; /::::::::::::::::::::::::::::\ ..:.:.:::.:::::.:.::.::::.... ` 、 ;:ゞ彡;ゞ
; :; ' ; : /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\ :::::::::::::::::.:::.::..:.:::.:..:.` .、 ;ゞヾヾゞ;
', ; .; ' | □ □ | モクベエ
! i! | □ □ | <今の娘は八兵衛の子であったか、杢兵衛の子であったか
l i ! ][][][]______|_
'"^''"'''~''"'"'"^"^^^'^'""'' _||_ _||_└i'"''"""'''"^"'^'^'"^"'""'"^'''^^''''''^"'~^^''^""^^'"^~^
.:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. :
. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . :
┌────────────┐
│ と陛下は仰せられる 即ち │
└────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
朝倉や木の丸殿に我居れば 名のりをしつつ行くは誰が子ぞ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌────────┐
│ との御歌である .│
└────────┘
160 :44:2010/03/28(日) 03:22:33.40
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ == ==
| ○-○
. | ___(_::::::)___ 斯様に古の王政の天皇は人民稼穡の事を思し召し
| \___ へ__/
. | }. 丸柱荒席の皇居にましまして、直接八兵衛も杢兵衛も懇意であった
. ヽ }.
ヽ ノ
/ く
┌───────────────┐
│さぁ 此の如く君民の間が親しき為 |
└───────────────┘
.:;,:.
.; . ,.. ´ ` 、 :;ゞヾ
' ;::, / \ ,. ' ` 、 ,;ミヾゞミ
' ;: : ' /:::::::::::::::\ ,. ' ..⌒ ... ~^~...` 、 'ゞミヾミ
:; : ; : .; /::::::::::::::::::::::::::::\ ..:.:.:::.:::::.:.::.::::.... ` 、 ;:ゞ彡;ゞ
; :; ' ; : /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\ :::::::::::::::::.:::.::..:.:::.:..:.` .、 ;ゞヾヾゞ;
', ; .; ' | □ □ |
! i! | □ □ | <民は国の本なり li l !
l i ! ][][][]______|_ .::.::i: l!i ::~^"''''' ー - -
'"^''"'''~''"'"'"^"^^^'^'""'' _||_ _||_└i'"''"""'''"^"'^'^'"^"'""'"^'''^^''''''^"'~^^''^""^^'"^~^
.:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. : .:. :
┌──────────────┐
│ と、王政の陛下は仰せられる .│
└──────────────┘
162 :43:2010/03/28(日) 03:28:41.56
ID:m437+n3o0 ┌────────────┐
│ 又、王政下の人民は…… │
└────────────┘
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| 陛下は我々の父母なり |
\ /
 ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ' "´ ̄ ` : 、 ____
/::::::::::::::::::::::::::ヽ:`:、 /@ @ @ @ヽ ___ |r┬、ヾ、\\
/:::::,::::::,:::::::、:::::::、:::ヾ:::::. /@/ ̄ ̄ ̄`ヽ@ヽ /\##\.! ! ..i\ .ノ
. l:,f::i|,:::::|_::::::||_:::::i|:::::i:::::| / / | | ⌒ ⌒ヽ###\ . //
|:::|::::|(⌒) (⌒)|::::::|:::::| | / ⌒ ⌒ | @| /ヽ (⌒) (⌒) ii###.i.'´/
´ |::::| 、 |_:::::|:::::| || (⌒) (⌒) | | / ヽ (__人__). ..i###//
´ iヽ、_ ‐- _,.|:`:|:::::| / |@| ヽ/〉 ノヽ {r┬-|. ノ#//.|
. |:::::|:::7 l/' ゙1::::|:::::| / | | //ヽノ / {`ー'´ .//##ノ
|:::::|::イ./ ,ィ |:::::|:::::| { / /|// ` ヽ //##/
|:::::|::i┴─:| |::::|::|i:| ヽ、 ノ / // ヽ//##/
|;'i/:j|___| l'i,:|::||:| ヽ``ー――‐''"ノx//x| . /,ィ'.ン ヽ
/ |┴─ |__,'ヾ| ||  ̄/○\ ̄x //x| | ,ィ'´// . |
`ヤ| lrェリ }:| | | 〈__/y/ヽ__〉x//ヽ,|x| ,. (⌒二_/| |
| | | ,ィ .|x x // x x(⌒ /x | //
┌─────┐
│ と慕い奉る. |
└─────┘
164 :42:2010/03/28(日) 03:35:32.75
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ == =
| ○-○ この王政君民の間には勤王家も、忠義者も
. | ___(_::::::)___
| \___ へ__/ ソシャリスト アナキスト ニヒリスト
. | ∩ ノ ⊃ 社会党も無政府党も虚無党もないのである
/ ./ _ノ
(. \ / ./ │
\ “ /___| |
. \/ ___ /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ○-○
. | ___(_::::::)___ 然るに折角人民と天皇とが親昵せんとしているのに
| \___ へ__/
. | }. 頭が高いだの恐れ多いだのと、この親子の仲を隔離し
. ヽ }.
ヽ ノ 間に立って自分が威張ろうとする連中がいる
/ く
166 :41:2010/03/28(日) 03:40:20.28
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
. / ノ \\/`i
| ○-○ ./ リ それで俺はそんな自称忠義者や勤王家が大嫌いなのだ
. | ___(_::::::)__.| /
| \___ へ__/リ ヒ 今の藩閥政府は君民の間を引き裂いた政権の詐欺師だ……
. ヽ // ,`弋ヽ
__ ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l
/ : : :介〈 `ー〈::....ノ V
| : : : : ::〈 「`ヽ_ー 、 `ヾ_/ //:|
| : : : : : /: | {::::} フ-、`ー┴‐- │
| : : : 〈: :│ {::::l /. :`ー‐一′ ::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____
/ \
/ ─ ─\
/ (一) (●) \ 一君万民思想ですか
| U ___'___ | なんだか随分憧憬的な感じがします
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | | 戦前の天皇といえば大元帥として屹立した存在だったと聞きましたが
.\ “ /__| |
\ /___ /
167 :40:2010/03/28(日) 03:45:24.21
ID:m437+n3o0 ____
┌────┐ / \
│ 天皇 │ /─ ─ \
└────┘ / (●) (●) \
. / │ \ | (__人__) | えーっと
/ │ \ \ ⊂ ヽ∩ <
┌────────────┐ | | '、_ \ / ) 要するにこんな感じかお?
│. 国 民 .│ 天皇の下みんな平等 | |__\ “ /
└────────────┘ \ ___\_/
,___
/ \
/ ⌒ ⌒ \ 夢野久作の天皇観は
/ (●) (●) ヽ
| ___'__ | どうだったのでしょうか
\ ,/
─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄ 夢野久作の長男杉山龍丸が
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ
/ヘ:. :{、 。 ノ./ こんな思い出話を記している
W>j ‐-t<iノ
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、
168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 03:46:23.13 ID:0jkPBoVx0
というかホントに天智天皇みたいな時代はあったのか?
「朝倉の宮の旧記で俺は読んだ」と杉山茂丸は書いていますね169 :39:2010/03/28(日) 03:54:36.70
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
,,.. ,, ,, .. ,,
,, -'' ;‐- ,, ,, ..,, - '' "'' ー ; ..,
-'' ''ー - ,, _ ,,, -- '' '' ー - : ,,
'' ー - ,,, :- '' '' ー :
-'' :: :::
┌────────────────────────┐
│ 父は筑紫野を歩きながら.こんな話をよく私にしてくれた │
└────────────────────────┘;;;;,,,;;;;;iii;;;;;;;iiiiiiiiii;;;;;
... ........ .......... / /ヽ .ヘニヽ ヘヘニヽ、....ヘニヽ / /ヽi..〃、............. ;;;;illll;;;lll;;lllllii llllllliillllll
!-!-! Ll_l LLl_l-! Ll_l Ll_l !-! ;;;;;ゞ;;;;;;;lllll;;liilll lllii;;lllll
' '' ' ' '' ' ;' ;; '' ' ' ' ' '' '
'' ''' '' ''' '' '''' ''' ;' '; '' '' '' '' '' '' '' '' '' '
'' ''' '' ''' '' '''' ,;' ';, '' ''' '' ''' '' '''' ''' '' ''' '
/ ̄ ̄\ ┌──────────────
/ _ノ \ │ 夢野久作の長男 杉山龍丸 ↓
| ( ●)(●) └──────────────
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ いいか龍丸、日本の天皇というのは ____ ノし
. | } /\ /\ て
. ヽ } 元来百姓出身であったのだ / ● ● \ なんと!?
ヽ ノ |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
i⌒\ ,__(‐- 、 /⌒l ィ’
l \ 巛ー─;\ / / ヽ
| `ヽ-‐ーく_) | l Y |
. | l
170 :39:2010/03/28(日) 04:00:46.08
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .| 一生懸命日本のために努力をして
! (__人__) | その徳で国民から慕われ、天皇となったのだ
, っ `⌒´ |
/ ミ) / 権力や法律の力でなったものではないのだぞ
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
___
/ノ ヽ_\
/ ● ● \
うーん…… |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
> ィ’
┌─────────────────────┐
│ それを聞いて、私は 大変困ったことを覚えている │
└─────────────────────┘
171 :39:2010/03/28(日) 04:05:07.55
ID:m437+n3o0 ┌─────────────────────────────┐
│学校で教えるのは、旧帝国憲法や皇室典範で規定された │
│天皇制、帝権神授説のような天皇を絶対の神とするものであった │
└─────────────────────────────┘
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
||
|| 万世一系 Λ_Λ
|| \ (゚ー゚*) カクカクシカジカ
|| ⊂⊂ |
||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_ | ̄ ̄ ̄ ̄|
( ∧ ∧__ ( ∧ ∧__( ∧ ∧  ̄ ̄ ̄
~(_( ∧ ∧_ ( ∧ ∧_ ( ∧ ∧
~(_( ,,)~(_( ,,)~(_( ,,) フムフム
~(___ノ ~(___ノ ~(___ノ
┌────────────────────────────┐
│ 父の言う事を先生に言う訳にもいかず、もちろん答案にも書けない. |
└────────────────────────────┘
___
/ノ ヽ_\
/ ● ● \
|⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
/⌒l ィ’
/ / ヽ
| l Y |
172 :38:2010/03/28(日) 04:10:57.32
ID:m437+n3o0 ____
┌────────────────┐ /一 ー\
│ さればとて夢野久作の言う事を │ / 〓 〓 \
│ 信じないわけにもいかなかったので │ |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | ……
│ 閉口したのである │ /⌒l ィ’
└────────────────┘ / / ヽ
| l Y |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____
/ \
. / ⌒ ⌒\ うーむ 「天皇は農民であった」とする夢野久作の天皇観は
. / /)(●) (●)\
| / .イ ___'__ | なかなか興味深いですね 茂丸のそれよりも更に民衆に近い感じがします
. /,'才.ミ). /
. | ≧シ' \
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 04:12:03.53 ID:0jkPBoVx0
>>父の言う事を先生に言う訳にもいかず、もちろん答案にも書けない
空気の読める子供だったんだな 174 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 04:12:44.36 ID:15ihuTm8O
うむうむ 175 :37:2010/03/28(日) 04:16:22.93
ID:m437+n3o0 ___
/ \
/ ⌒ ⌒\ 時代の価値観に染まらない天皇観
/ ( ●) (●)\
| ___´___ | これは父親の影響を受けていたのでしょうね
ヽ、 `ー '´ /
/.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j ……影響を受けていたのは思想面だけではない
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ この時期農園経営に苦戦していた杉山泰道の生活は
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 茂丸からの仕送りでなんとかやりくりしていた
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
176 :37:2010/03/28(日) 04:22:12.20
ID:m437+n3o0 / :. ィ.;:.:.:.:.:.:.:ヽ
イ:.:.:.:/-|/|∧:;、:.:.〈
リ:.:./ ● く!:,:.:..、
l:.:.l ●/:./ ̄
vヘ - ノ:./ そしてそれが、時に夫婦喧嘩の原因にもなっていた
_,-+ 匸ヘ/V
,《 ヒ⌒j 》、
l::\ l /∥::l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
, ⌒ハ ハ⌒ 、 ┌────────────
j:::::::::ヽ ,ヘ^ ⌒ Y ⌒ヽ/ .::::::::i │←夢野久作の妻 杉山クラ
ノ:::::::::j(ノ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i .└────────────
ル:::::リγ::..:::::..:::...ヘ、: : : :: ノy:::::::リ
Yyノ ノ :ノ...:ノ ノ ヽ ::::::) ルリノ あなた、もうお父様からの仕送りに頼って生活するのは止めにしませんか
リ::::::( ( ●) (●::(
. ハ::::ハ ,, r‐ァ リ) ) 私も、養蚕の仕事をしていますけどもっと働きます
) ) )、  ̄ノくハ(
(,(.( ' ヘ い ノ:::))
ノ/)` ヾ ソ ̄(( 、 / ̄ ̄\
,' ノ Y Y _ノ ヽ、 \
(●)(● ) |
. (__人__) u .|
うむ……いや それでは何かと角が立つだろう ヽ⌒ ´ |
{ /
あちらの好意をそう無下にするのもな lヽ、 ,ィ'.) ./
j .}ン// ヽ
ノ '"´  ̄〉 |
. { 勹.. |
ヽ 、__,,ノ . |
177 :36:2010/03/28(日) 04:28:41.18
ID:m437+n3o0 , ⌒ハ ハ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ヘ^ ⌒ Y ⌒ヽ/ .::::::::i
ノ:::::::::j(ノ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i ……お義母さまやその周りの人達が
ル:::::リγ::..:::::..:::...ヘ、: : : :: ノy:::::::リ あなたを、私たち家族を蔑んでいることは知っているでしょう
Yyノ ノ :ノ...:ノ ノ ヽ ::::::) ルリノ
リ::::::( ( ●) (●::(
. ハ::::ハ ,, リ) ) そんな人達に甘えるのは止めにして
) ) )、 ⌒ ノくハ( 私たちの力で、独立してやっていくべきですッ
(,(.( ' ヘ い ノ:::))
ノ/)` ヾ ソ ̄(( 、
,' ノ Y Y
l: ( ...... ..... i
lヾ. .. :::::::: ::::: .ノ
./ ̄ ̄\
/ ヽ、_ .\
. ( (一 ) . |
. (人__) |
r‐-、 U |
すまん、苦労をかけて…… (三)) . |
> ノ /
今は耐えてくれ…… / / ヽ、 . /
/ / ⌒ヾ .〈
(___ゝ、 \/. )
. |\ ,.1
. | \_/...|
180 :35:2010/03/28(日) 04:34:40.22
ID:m437+n3o0<ここまで馬鹿にされても黙っていろと言うんですかッ 私は口惜しくて……
<……耐えてくれ……
____
/― ―\
/ ● ● \
|⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | ……
/⌒l ィ’
/ / ヽ
| l Y |
182 :34:2010/03/28(日) 04:40:36.12
ID:m437+n3o0 ::::
::: ,,,,,;;;;;;;;,,,;;;;;iii;;;;;;;iiiiiiiiii;;;;;
... ........ .......... / /ヽ .ヘニヽ ヘヘニヽ、....ヘニヽ / /ヽi..〃、............. ;;;;illll;;;lll;;lllllii llllllliillllll
!-!-! Ll_l LLl_l-! Ll_l Ll_l !-! ;;;;;ゞ;;;;;;;lllll;;liilll lllii;;lllll
' '' ' ' '' ' ;' ;; '' ' ' ' ' '' '
'' ''' '' ''' '' '''' ''' ;' '; '' '' '' '' '' '' '' '' '' '
'' ''' '' ''' '' '''' ,;' ';, '' ''' '' ''' '' '''' ''' '' ''' '
,;' ';,
────────────────────────────────────────
- -、
● ● ヽ
(,、__,)○ノ
/ ヽ ) )
(| , し'
ヽ(_ノ キュムキュム
.. . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .:::: .:::: .. .. . ... .::::.. . . .:: : :.. . ...
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""''''
────────────────────────────────────────
___ |r┬、ヾ、\\
おお 杉山の坊ちゃん> /\##\.! ! ..i\ .ノ
⌒ ⌒ヽ###\ . //
(⌒) (⌒) ii###.i.'´/
| | . ..i###//
___ !__`___ ノ#//.|
/― ―\ <あ 近所のおっちゃん {`ー'´ .//##ノ
/ ● ● \ ヽ //##/
/⌒ヽ⊂⊃ (_,、_,) ⊂| ヽ//##/
ヽ ヽ ィ /,ィ'.ン ヽ
185 :33:2010/03/28(日) 04:46:49.67
ID:m437+n3o0 ___ |r┬、ヾ、\\
/\##\.! ! ..i\ .ノ
⌒ ⌒ヽ###\ . //
(⌒) (⌒) ii###.i.'´/
お父さんたちは元気け? | | . ..i###//
!__`___ ノ#//.|
{`ー'´ .//##ノ
ヽ //##/
ヽ//##/
/,ィ'.ン ヽ
___
/― ―\
/ 〓 〓 \ うん お父さんもお母さんも朝から喧嘩して
| ⊂⊃ (_,、_,) ⊂| どちらも泣きよっしゃん
ヽ ィ‘
_ ___ |r┬、ヾ、\\
\ /\##\.! ! ..i\ .ノ
/ ⌒ ⌒ヽ###\ . //
 ̄ (⌒) (⌒) ii###.i.'´/
(ナヌ) | | . ..i###//
!__`___ U ノ#//.|
{`ー'´ .//##ノ
ヽ //##/
ヽ//##/
188 :32:2010/03/28(日) 04:54:25.34
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ , /, 、 \. ヽ、
/// / / | \ .} lヽ、
ノ // / /、 | '、\ ヾ. | l lへ、
/j/{ |/ノ_.lル' `_≧_ヽ}ル',、ヽr'ー`
' !ィ|Y{ ィ五` ´ r‐ァ| /_ハ,lYゝ
リヽヘ匕! 匕メ/,ノ)/リ
}、!、 '_ //ll// 後でその農夫から話を聞いて
,、 レ l>ェ .ィレリ人l
f冫^ソ/ ,-'T ̄∠' __,/`!、 皆で大笑いした、というエピソードがある
/ / /.| ll ヒニ二コ/ へ.._
,,ェl / ./ ::| ll |イ⌒ヘ/ 〃7、
____
/ \ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ__\) ;;;;)
/ (─) (─ /;;/
| (__人__) l;;,´| うーん いい年して親の仕送りに頼っていたのかお
./ ∩ ノ)━・'/
( \ / _ノ´.| |
____
/ \
/ _,ノ \ \ 農園経営に失敗し、本人は自立したくてもできなかったのでしょう
/ (●) (●) \
| ' | 鬱屈したものが溜まっていたでしょうね……
\ ⌒ /
191 :31:2010/03/28(日) 05:00:05.32
ID:m437+n3o0 ─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ
/ヘ:. :{、 。 ノ./ もちろん泰道は何もしていなかったわけではない
W>j ‐-t<iノ
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、
j Y、:.:.l : :/.彳/! 〈
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
| (__人__)
| ` ⌒´ノ. ┌───────────────────────┐
| } │農園に依存しない生活を求め泰道は九州日報に入社.. |
ヽ }. │ │
ヽ、.,__ __ノ │新聞記者としての道を歩み始める │
_, 、 -― ''"::l:::::::\ー-..,ノ,、.゙,i 、 └───────────────────────┘
/;;;;;;::゙:':、::::::::::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、_
丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::/:::::::\゙'' ゙||i l\>::::゙'ー、
. i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::\::::::::::\ .||||i|::::ヽ::::::|:::! ←大正八年四月入社
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
194 :30:2010/03/28(日) 05:06:43.04
ID:m437+n3o0┌────────────────────────────┐
│入社してからは上司の加藤介春編集長に徹底的にシゴかれ .│
│ │
│ 記者として文章力を鍛えられていった .│
└────────────────────────────┘
メ / ̄ ̄\ヽ
//u_ノ ヽ、_\ヽ ヽ
l | ((●)) ((●))| l つ
l | (__人__) | ! わ
l |ヽ |!il|!|!| / .| l ぁぁ
l .| |ェェェ| } l あぁ
ヽヽu } l ああ
人 ノ く ぁあ
ノ メ/ ヽヾ
_/((┃))____i |__ ガリガリガリガリッ
/ /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ (,,ノ ̄ \
/ /_________ヽ \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
九州日報社で(略)自由詩社の元老として有名な加藤介春氏から
神経が千切れる程いじめ上げられた御蔭で
仕事に対する好き嫌いを全然云わない修業をさせられました
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『
スランプ』
198 :29:2010/03/28(日) 05:12:11.81
ID:m437+n3o0 _ - ───----- ,フ
/ r: : : : : : : : : : : : : . \
,.-′´`: : : : : : : : 、: :ヽ . :ヽ
/: :/: : : : : :./: . .ヽ. :ヽ: : ヽ:ヽ
/: : .l. . . . ..!./: :.l!: :l、: : l、: :ト:ヽ: ト. |
j:l: : :|: l: : |:l/: :/ !: ハ: .ハ孑、ト. :!ヽ
/:_!: : :t: l: : !l: :./-∀‐ レ ,ィホT、!| 加藤介春はこの頃活発に詩活動をしており
.'´ .! l: : ヘ!: :l:ト/,夂〒`ヽr-{ ヒツlノ:ト 既に二冊の詩集をだしていた
. 〉!ハ: {ヽ: T-弌ニツ ノ 、 ーj´:/
'´ ヽ!=ヘ ヘ ` ´´ - .イ /
ヽ:`T - .. _ / レ 杉山泰道は彼の詩から大きな影響を受けたことが
j \‐ - 、_!、__ 以下の詩からも伺える
/ ヽ.jヽ , 、
l _r ニ=、、 ヘ.', __/ `ヽ、
| , 〃/ ̄`ヾミ.トr´r ' >- ' ¨ ´ `>、
. ト, // /:::::::::::::::::ヽ::::Y / / /
∨/./::::::::::::::::::::::::l:::::l / / /
ト、/!::::::::::::::::::::::::::l:::::ト、、/ _/、 ソ
!::::::l::::::::::::::::::::::::::l:::::| Y--ヘ´/::::::::}- ′
200 :28:2010/03/28(日) 05:19:34.35
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
赤ん坊の手 加藤介春
うまれたばかりの赤ん坊が手をかたく握りしめているのは
うまれぬまへの記憶を、
うまれぬまへの思想を、
ふしぎなる生命の起源を、
ぢつと握つてゐるのです。
すべてみなうまれるまへの事です。
うまれぬまへの世界の事です。
父がもしそれを聞いたら
どんなにかおそれるかもしれない秘密です。
父よ、何んにも聞かぬがいゝ、
子よ、何んにも答へぬがいゝ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
加藤介春第三詩集『目と目』より (大正十年刊行)
201 :27:2010/03/28(日) 05:25:39.63
ID:m437+n3o0┌──────────┐ ____
│胎児よ │ / \ へえ
│胎児よ │ /─ ─ \
│何故躍る │ / (●) (●) \ あの有名なドグラ・マグラの巻頭歌と
│母親の心がわかって | | __´____ | なんとなく似ていますね
│おそろしいのか. │ \ ⊂ ヽ∩ <
└──────────┘ | | '、_ \ / )
| |__\ “ /
\ ___\_/
─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \ 「今日の自分があるのは加藤介春先生のおかげ」
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄ 後に泰道はこう語った
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ
/ヘ:. :{、 。 ノ./ 彼は九州日報の記者時代に、加藤介春から
W>j ‐-t<iノ 様々な影響を受けたものと思われる……
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、
j Y、:.:.l : :/.彳/! 〈
. へ≧! \ミ|::/彡/ k≦_〉
205 :26:2010/03/28(日) 05:29:52.53
ID:m437+n3o0┌────────────────────────┐
│
街頭から見た新東京の裏面 ...│
│ │
│ │
│ │
│
東京人の堕落時代 .│
│ │
└────────────────────────┘
, " ̄ ̄ 丶、
/ \
ノ゙! / , { / { / } ヽヽハ/^ーァ
r=' \j |イ/⌒Vヽハ⌒lヽ} j} /´
 ̄\ イ j :|fト fハ/ノリ/ さて、この九州日報に泰道が連載していた
7レヘ { ゞ'' _ `‐' {/ベ. 関東大震災後の東京観察リポートにちょっと注目
く/ /V> __ イ∧ヽ/
\{ { l::lVミVl::l / ∨ このリポートで 泰道は東京と、そこに住む人々の現状を嘆いている
Y\ヾ ∀ シ/ r'´
| .≧f}≦ |
`ァー∨=∨‐く
207 :25:2010/03/28(日) 05:36:28.18
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
誰でも自分のわるいことを弁解をして塗りかくすためには、鹿爪らしい漢語を使うものである。
勿体らしく構えて、腹の底を見すかされまいとする時も同様で、こんな場合に漢語位便利なものはない。
(略)今に東京の市政は、漢語の本家本元の支那のようになりはしないかと思われる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
___
/ ヽ、_ \
/(● ) (● ) \ 当時の東京市政の腐敗堕落について言及していますね
/::: __´__ :::::: \
| l^l^lnー'´ | 現代の僕らから見ても こういう記事は、なんだかあまり笑えません
\ヽ L /
ゝ ノ
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ ─ ─ ヽ 市政だけでなく 市民にもなかなか厳しい視線が向けられているお
| (●) (●) |
\ ∩(__人/777/
/ (丶_//// \
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
彼等(東京市民)はだから現代の文化に何者をも与えない。彼等は只批評をするばかりで、共鳴も反対もしない。
只冷やかに笑って見ていたいのである。(略)
だから選挙なぞは、彼等にとってうるさいものでこそあれ、責任感はすこしも受けない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『街頭から見た新東京の裏面』より
208 :24:2010/03/28(日) 05:43:07.41
ID:m437+n3o0 ─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ 『東京人の堕落時代』では東京市民を批判しつくしている
/ヘ:. :{、 。 ノ./
W>j ‐-t<iノ
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、
j Y、:.:.l : :/.彳/! 〈
. へ≧! \ミ|::/彡/ k≦_〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(ー)
.| (__人__)
/ ` ⌒´ノ 彼等東京人が真実に模倣し得るものは、
/ ヽ ⊂二二 ̄\ 只外国文化の堕落した方面のみであった。
/ \ ⊂、' ヽ
/ \_, `7 /
/ へ \ !/ / 彼等が本当に持っているものは、唯浅ましい本能だけであった。
| \ Υ /
| \ /\
| / \__/.,,_r ヽ、
210 :23:2010/03/28(日) 05:50:13.70
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ \
|:::::: | 浅薄な意味の文化的プライドに包まれた、
. |::::::::::: | 低級な本能だけを保有しているに過ぎなかった。
|:::::::::::::: | ....,:::´, .
. |:::::::::::::: } ....:::,, .. だからイザとなると、今までのプライドをなくしてしまって、
. ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ . 禽獣の真似をして恥じないのであった。
ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: .
/:::::::::::: く ,ふ´..
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ――
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ 「日本の生命は首都には無くて、地方に在る。」
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ こう断言した彼は47歳で亡くなるまで
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 故郷福岡にて創作活動を続けた
/| l:| | ===| |:l゙ヽ
/ | l:l l l l::l l
212 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 05:55:26.82
ID:m437+n3o0 ____
/ \
/ _,ノ \ \ 47で他界したのですか……
/ (●) (●) \
| ' | まだまだこれからって時のような気もします
\ ⌒ /
_,. --─- ,_
-''テ''´ _ ヽ
,r'ァ' ,r// , , `!
´ ' /,'/_ィ,イ ! | | ヽ
l1,l ハ.、`|/| /トィ._| |
〃 l lュ} ', -、.V/ / | 久作の死は突然死だった
. l| l ' 5iツ ノ ハ|
ヽトlヽ` /,.-シイ″
`¨仁'-'ユ、
,r=ニ.ヽ、 l
_,.. イ ヽ`、 ヽ
●
●
●
214 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 05:59:42.01
ID:m437+n3o0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌──────────────
│ 昭和十一年 三月 東京にて
└──────────────
_____
/.::::::::::::::::::::::::::.ヽ
|.:::::::::γ⌒Y⌒ヽ::.|
|::::::::/ ⌒ ⌒ |
|:::::::〉 ( ●) (●)|
(@ ::::⌒(__人__)⌒) 杉山さん 予定のごとく、終わりました
| |r┬-| |
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i | ←アサヒビール社長 林博
> ヽ. ハ | ||
┌───────────────────────────┐
│父茂丸の残した莫大な借金の後始末がようやく終わったと ....│
│会計を担当した林氏が報告をしにきた .│
└───────────────────────────┘
216 :20:2010/03/28(日) 06:00:24.26
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ⌒)(⌒)
| (__人__)
| ` ⌒´ノ やっと終わりましたか ご苦労でした
,| }
/ ヽ } いやあ、これで……アッハッハッハ
く く ヽ ノ
\ `' く
ヽ、 |
| |
┌───────────────────────┐
│ と笑いながら彼はそのまま後ろに倒れてしまった .│
└───────────────────────┘
/ ̄ ̄ ̄\
| ドサッ |
\_ _/
∨
┃┃┃
┃┃┃
217 :19:2010/03/28(日) 06:06:07.74
ID:m437+n3o0 _____
.. /.:::::::::::::::::::::::::::ヽ
.. |:::::::γ⌒^Y⌒ヽ :.|
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..| す、 杉山さん! どうかしたんですか!
|:::::::〉 ( ○) (○)|
. (@ ::::⌒(__人__)⌒) 誰か! 来て下さい!
| u |r┬-| |
\ `ー'´ /
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノ゙-、.
: | '; \_____ ノ.| ヽ i
| \/゙(__)\,| i |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
─-、_
r'⌒:. :. :. :. :. :. .\
/:. :. :. /:.ハ. :. :. ト.:.:.`:、
|:.l:. :. /ノ- Y:. ノ弋リ:. \
V|:. :.| ft‐+、'´ftォ_「:.| ̄ 死因は一年前に他界していた
)y:. :| "-' _ ゙-' j:.リ 父茂丸と同じ脳出血 ____
/ヘ:. :{、 。 ノ./ / \
W>j ‐-t<iノ /─ ─ \
r'ヘ¨´:.:.|─‐/:.:∥7ー、 / (一) (一) \
| (__人__) |
最後まで父親に \ ⊂ ヽ∩ <
| | '、_ \ / )
翻弄された人生だったのかお……. | |__\ “ /
\ ___\_/
221 :18:2010/03/28(日) 06:11:18.14
ID:m437+n3o0 ___
. ´ `丶
.イ ヽ
/ '.
ノイ / , i '. i
_,. .-‐Ⅵf.イ}/j∧ハ:i ハ{ ちなみに彼のペンネーム夢野久作も
.イ:: f 从ィ芒 , 芒从/
. _,. イ::::::i::::∨ ト . - r个j`ヽ 父茂丸とのエピソードに由来している
. r<::::::::::::::::l::::::∨ ! 厂 :/.j::::ハ
{::::::::: `:::::::::j:::::::::ヾ | リ / /:::::::i
ヽ::::::::::::f⌒ '7:::::::::\ { / /. イ::::::::::l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌───────────────────┐
│大正十五年三月 上京していた泰道は ....│
│投稿する原稿のペンネームをどうするか .│
│東京の茂丸の家で話し合っていた │ _ _,
└───────────────────┘ ___,> Y´'ー-、
_>z二_ ___`ー≧__
/ ̄ ̄\ >┴'´ ̄` ‐-、 ̄ 7 <
/ _ノ \ / ヽ `Y′之>
| ( ●)(● . / , l、 、 , 、 | ヽ }<
| (__人__) l ,ィ {7Tハ T寸寸 | }ノ |
. | ノ どーしたもんかな |ハ |(●) (●) / / ,/レ′
| ∩ ノ ⊃ `| ヽ 「)'/|/
/ ./ _ノ ヽ、_ ― _,.ィT/ うーむ……
(. \ / ./_ノ │ l 7Eニ::ィ1│
\ “ /___| | 'イ/ヽ::::`l┘
. \/ ___ / i´ ̄ `|::::|
225 :17:2010/03/28(日) 06:17:58.10
ID:m437+n3o0┌────────┐
│ すると茂丸が ..│
└────────┘
/ ̄ ̄\
/ == =
| ○-○
. | ___(::::::)__ どれ 俺にも読ませてみろ
| ヽ__へ__/
. | }
. ヽ }
ヽ ノ m ┌────────┐
/  ̄ ̄ ̄ つ │ とやって来た ...│
| | ̄ ̄ ̄ └────────┘
┌─────────────┐
│ そして原稿を読んだ後に │
└─────────────┘
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ○-○ ふーん 夢野久作が書いたごたある小説じゃね
. | ___(_::::::)___
| \___ へ__/
. | }.
. ヽ }. ┌──────────┐
ヽ ノ │ との感想をもらした │
/ く └──────────┘
226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:22:14.51 ID:MQ5tpQuZ0
んん? 元ネタがあったのか? 228 :16:2010/03/28(日) 06:23:14.95
ID:m437+n3o0 / , /, 、 \. ヽ、
/// / / | \ .} lヽ、
ノ // / /、 | '、\ ヾ. | l lへ、
/j/{ |/ノ_.lル' `_≧_ヽ}ル',、ヽr'ー`
' !ィ|Y{ ィ五` ´ r‐ァ| /_ハ,lYゝ 博多の言葉で
リヽヘ匕! 匕メ/,ノ)/リ 「いつも夢ばかり見ているような うすぼんやりした役立たず」
}、!、 '_ //ll// のことを夢の久作さんと呼ぶ
,、 レ l>ェ .ィレリ人l
f冫^ソ/ ,-'T ̄∠' __,/`!、 泰道はそれをそのまま自分のペンネームにしてしまったのだ
/ / /.| ll ヒニ二コ/ へ.._
,,ェl / ./ ::| ll |イ⌒ヘ/ 〃7、
____
.. / \
/ ─ ─\
/ (●) (●) \
| ' | 夢ばかり見ているうすぼんやりした人、ですか……
\ ⌒ /
. /⌒ヽ ィヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 | ただ、
>>207にもあるように彼の眼差しは
./ / r─--⊃、 | 必ずしも夢ばかり追って、現実に目を背けてとは思えないですね
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:25:17.05 ID:MQ5tpQuZ0
ほー 知らんかった 231 :15:2010/03/28(日) 06:28:46.80
ID:m437+n3o0 ____
/ \
/ ─ ─\
/ (●) (●) \ 鋭い観察眼に基づいた自身の思想は彼の作品に
| ___'___ | 盛り込まれているように思います
/ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ " /__| |
\ /___ /
____
/ \
/ ─ ─\ 『ドグラ・マグラ』ではアンポンタン・ポカン君が
/ (●) (●) \
| ___'__ | ∩ 近代物質文化を批判していましたっけね
\ / ( ⌒)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
人類は物を考える脳髄によって神を否定した。大自然に反逆して唯物文化を創造した。自然の心理から生れた
人情、道徳を排斥して個人主義の唯物宗を迷信した。そうしてその唯物文化を日に日に虚無化し、無中心化し、
動物化し、自涜化し、神経衰弱化し、発狂化し、自殺化した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『
ドグラ・マグラ』より
232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:31:59.26 ID:MQ5tpQuZ0
まさに現代日本といった感じだな
もしかして日本人は100年前からろくに変わってないんだろうか 233 :14:2010/03/28(日) 06:33:46.25
ID:m437+n3o0 ____
/ \
/ - - \
/ (●) (●) \
| __´___ |
>>5で夢野久作は幻想、怪奇作家として紹介されていますが
\ `ー'´ / それだけでは語れない彼の魅力が
/ ∩ノ ⊃ / 長門さんのお話から見えたような気がします
( \ / _ノ | |
. \ “ /__| |
\ /___ /
(ヽ三/) ))
___ ( i)))
/⌒ ⌒\ \
/( ●) (●)\ )
./:::::: ⌒(__人__)⌒::::\ やる夫も夢野久作に興味がでてきたお
| (⌒)|r┬-| |
,┌、-、!.~〈 `ー´ _/ 後で図書館とか青空文庫で色々読んでみるお!
| | | | __ヽ、 /
レレ'、ノ‐´  ̄〉 |
`ー---‐一' ̄
235 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:36:25.78 ID:MQ5tpQuZ0
ドグラマグラはアレすぎるけど他のは割りと普通に読めるんだよな 237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:39:38.22
ID:m437+n3o0 /.:.:. \
/:,:.:.: / ヽ \
/.:.l:.:.:/:/ :/ ', :l ヾ`ー
/!:.:.|:.: l/ 〃 / j } :| ハ
/イ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ム_/| l l }
N:.ハ:.:.:lィfアト/ レ ィ=ト | /| ∧j そういってもらえるとうれしい
ヽム:.} c;_j c;リ ル iレヽ
`ヘ:ゝ .' 小/
ヾ:{>、 _ ィ<}/|/ ……まだまだ紹介したいエピソードはあるのだが長くなるので
_, ィr'´ヽ{ ___`} ヽ、_ 最後に夢野久作の長男杉山龍丸氏の思い出話を紹介して
/| l:| | ===| |:l゙ヽ このスレを終わりにしたいと思う
/ | l:l l l l::l l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌───────────────────────┐
│ 福岡の田園地帯を一緒に散歩していたときのこと ......│
└───────────────────────┘
: : : : : : : : `ー--,
: : : : : 、: . : : ゙ヽ、
::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:゙゙゙゙'''''''‐- 、 ,,,,,_
::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:`゙ ''ー- _,,.--ー''''''"゙
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''"" ゙゙̄"'''''―-
''"''''"""''"""'''''"""''""''""",,,,-‐'゛ '''''"""''""''''""''"''''""''"""'''''"""''""゙''、,,"'''''―-- '''""''"''''"""''"""''''
..:ヾ:ヾ.ヽ.:ヾ: ヾヾヽ.:ヾ ...ヾ.,. .ヽ.:,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ヾ:.,..ヽ.:ヾ .. ヾヾヽヾ. ヾ .. ヾヾヾ``'‐.``'‐.、ヾヽ..ヽ.:ヾ .
ヾヾ ヽ.: ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ ヾ .. .,.ヾ.,. .ヽ .:ヾ:. ..ヽ``'‐.、``'‐.、 .:
ヾヾヽ ヾ ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ :.,..ヽ.:ヾ .. ヾ ヾヾヽ ヾ ヾ.,. .ヽ.:ヾ:
ヾヾヽ ヾ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ ヾヾヽ ヾ ヾ::.ヾヾ
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''""
;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:';';';::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:;';',: '::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:;';';.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.
238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:43:18.71
ID:m437+n3o0 ∧_∧
( ゚∀゚)
/ ヽ ヽ
|- - - -/⌒ヽ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -/ 0メ ザック ザック
' /″⊂ ̄ ̄ ̄⊃″″″ /″″″″″″″″' / ″/ /,>" 〉 \_
/″″(::.´д`.)″″″' /″″″″″″″″''./ ″(_ノ (__) /:::/ ″
″″ .( )U( )″″″/″″″″″″″″' / ″″″″ ″″ ノ・ ./ ″/ ″″
''"''"'' |_#_i__i!i|"''"~~~''"'"''"''"''"''"''""~~~"''"''"''"''"''"''""''""''""'~~~"''"''"''""''"''~
. (__)_). .
wji!w rw,'rilwji!w、 wWkil rw,'rilw'rrr、 wjWilw'r rw,'
''"''"''"''"~~~''"''"''"''"''"'' "''"""''"''~"''"'''"''""'~''"''"
┌──────────────────────────┐
│お百姓さんが一生懸命に耕作作業をやっているのを見て .....│
└──────────────────────────┘
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ
. | } 龍丸、ちょっと来い
. ヽ }
ヽ ノ mm
/  ̄ ̄ ̄ つノ ┌────────────┐
| | ̄ ̄ ̄ │ と言って私を座らせた .│
└────────────┘
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:46:49.48
ID:m437+n3o0 ./ ̄ ̄\
/ ヽ、_ .\
. ( (● ) . |
. (人__) |
r‐-、 . | 龍丸よう見てみろ 世の中の文化を作っていったのは
(三)) . | あのお百姓さんたちだ
> ノ /
/ / ヽ、 . /
/ / ⌒ヾ .〈 軍人や学者や政治家や文化人などではない
(___ゝ、 \/. )
. |\ ,.1
. | \_/...|
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \/`i
| (●)(●)./ リ
. | (__人__)..| /
| ` ⌒´ リ ヒ あのお百姓さんたちが我々のために稲を作り
. ヽ // ,`弋ヽ 山に樹を植えて、努力しておられるのが
ヽ - ′.Y´ , `ヽ`.l 我々の生命を支えているのだ
/〈 `ー〈::....ノ V
| ヽ_ー 、 `ヾ_/ // これをよう覚えておけ
| フ-、`ー┴‐-〃
`ー‐一′
242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:50:46.69
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●)
. | . (__人__)
| ` ⌒´ノ 世の中で一番恐いのは軍人でも学者でも政治家でもないし
. | } 文化人といっている人々でもない
. ヽ }
ヽ ノ
i⌒\ ,__(‐- 、
l \ 巛ー─;\
| `ヽ-‐ーく_)
┌─────────────────────────────┐
│あのようにカンカンの太陽の下日焼けして、節くれだった手をした ....│
│学問も何もないお百姓さんが真正直に言う言葉の力の方が .│
│如何なる宗教や哲学者より真実である ...│
└─────────────────────────────┘
_,..-――-:..、 ^^
/.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::.\ ^^
/ .::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::..ヽ
,',',',',',',',',',',',',',',','',',',',',',,',',',',',',','╋',','T'/ ヾ、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、゙、
,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,v,....┃,v,/ ヽ、v、v、v、v、v、v、v、v、v、v、v、v、v、v
vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv;;.;┃v/ o ヽvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv
vVvVvVvVVvvVvVvVvVvV┃ Π o ヽvVvVvVvVvVvVvVvVvVvVvVv
vVvVvVvVV;vvVvVVvVvV/ 介 ヽvVvVvVvVvVvVvVvVvVvVvVv
vVvVvVvVV;vvVvVvVvV/ ヽvVvVvVvVvVvVvVvVvVvVv
vVvVvVvVvv;VvVvVvV/ ヽvVvVvVvVvVvVvVvVvVvV
244 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:55:08.02
ID:m437+n3o0 / ̄ ̄\
/ _ノ \ ( ;;;;(
| ( ─)(─ ) ;;;;)
| (__人__) /;;/
. | ノ l;;,´ その真実が本当に恐ろしいものである
| ∩ ノ)━・' それを忘れないようにしろ
/ / _ノ´
(. \ / ./ │ ┌────────┐
\ “ /___| | │ と言っていた │
. \/ ___ / └────────┘
____
/― ―\
/ ● ● \
|⊃ (_,、_,) ⊂⊃ | ……
/⌒l ィ’
/ / ヽ
| l Y |
┌───────────────────────┐
│私にはその時、その意味はよく分からなかったが ...│
│今もその言葉は私の胸に焼き付いている │
└───────────────────────┘
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 06:57:49.79
ID:m437+n3o0__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄ _
-=ニニニニ=- .ノ 、ヽ、
ー ー) l
(人__) | _,,-''"
ヽ ノ ,-''"; ;,
/-r-.、 〉''"'; ', :' ;; ;,'
,, ''| | |-'.|; ;; ': ,'
_,,-','", r┴┴.┤ノ': ,: :'
_,,-','", ;: ' ; ̄ ̄ ̄: :'
┌────────────────────────┐
│彼は蓮華草の花の中に座り、何時までも何時までも ......│ ┼ヽ -|r‐、. レ |
│何か物思いに耽っていた…… ...│ d⌒) ./| _ノ __ノ
└────────────────────────┘
参考書籍
夢野一族 杉山家三代の軌跡
夢野久作の場所
福岡から見た昭和史
夢野久作の世界
百魔
夢野久作全集
夢野久作著作集
後半はしょりました なので名前ランの番号は意味なくなっちゃいました
次は杉山茂丸で何かやってみようかと思ってます 機会があればまた ではー
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夢野久作の使う『おそろしい』って言葉は『恐怖』ってだけの意味じゃあないみたいだな
ひょっとしてやる夫ドグラマグラの作者さん?
なんか終始冷静な突き放した感じが似てるなとそう思った。
ペンネーム決めるくだりで二葉亭四迷を連想した。
二葉亭四迷のはアレ、本人の洒落なんだけどな。
エピソードは有名だし本人も言いふらしてたけど、編集者だか文人仲間だかが「ボケを思いついた(くたばってしまえ⇒二葉亭四迷)からペンネームを決めて、さも本当のことのように吹聴した」ってことを述懐してる。
悪ふざけが好きな人だったらしい。
二葉亭四迷も同じく親父が言った言葉からだよ。
当時、作家とは下賎な職とされてたから
くたばってしめぇ!から二葉亭四迷となった
当時から文学部っていうのは、世の中の主流から外れた存在、しかも、アウトローとか反体制でもなく、
引きこもりか高等遊民だったようだね。
だから、夏目漱石が文豪だなんて呼ばれる。
夏目漱石も49歳で死んだはず。精神肉体両面で病気かかかりっぱなしの生涯。今の時代なら結婚なんてできないだろ。
当時は、文才あっても、健康で活動的な人は作家なんぞにならなかったんだろうな。
>あのお百姓さんたちが我々のために稲を作り
>山に樹を植えて、努力しておられるのが
>我々の生命を支えているのだ
この時代にアメリカで始まった機械化農業の視点で見れば、
時代錯誤な発想だよ。
一人の百姓の手作業じゃ生産効率が悪すぎる。
ある程度の規模で機械を駆使して効率的にやらないと。
最近では全作業ロボット化も夢ではないという。
>東京市長永田秀次郎氏は、後藤新平氏のあとを受け継いで東京市長の椅子に座ると間もなく、彼かの大変災に出会った。
>高知の富豪の子で、人格者で、大男で、文芸趣味に造詣ぞうけいが深く、寝ころんでも愉快に生涯を送れる身分でありながら、
七面倒臭い東京の市長になって、兎とも角かくも利欲に眼をくれず、どっちかといえば大した過ちもなく、
あれだけの世話を焼き通して来たところを見ると、余程の自信と覚悟とがあったものと見なければならぬ。
それが市区改正の大事業……言葉を換えて云えば東京の改造……否、寧ろ日本文化の中心改造という大仕事を眼の前に控えながら、
高が一局長の椅子に市会が押し上げた人物が気に入らぬ位の事で、市長の椅子を蹴飛ばす程短気であろうとは、誰しも想像し得ないところであっただろう。
永田氏が去ると同時に、その部下の有力者数名もバタバタと辞表を出して椅子を離れたので、東京は首無し死体どころではない。首から上が抜けてしまって、一時ヨイヨイのようになってしまった。
も一つ驚いたことには、新たに電気局長の椅子にねじ据わった大道良太クンが、なかなか座り腰の強いことであった。部下がストライキを起しても、新聞で嘲られても恬てんとして知らぬ顔で、あべこべに盛さかんに熱を吹いて、「俯仰天地に愧はじぬ」とか、「断じて市会議員を買収したおぼえはない」とか云っていた。
その口の下から、怪しい市会議員がドシドシ検事局へ引っぱられた。そうして買収された罪状が一々明白になったにも拘らず、大道局長は依然として反そり身みになって、例の鼻眼鏡を光らしていた
今度は又大変な評判が事実として伝えられた。永田市長が辞職してから以後これまでの出来事は、みんな芝居だというのである。否、永田市長の辞職からして芝居だと云うものすらある。あれだけの大記事や号外を出して、十字街頭の人々を驚かし、電気局の喰うや喰わずの月給日給連に局長反対のストライキまでやらせたのが、みんな芝居だとは、生き馬の眼を抜くどころの騒ぎじゃない。
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最近でも厚顔な輩はいる。それに、東京に限らず地方にもいたろうに。
ところで、局長の任命権って当時は市長でなく市会にあったのか。
ここで又一つわからない事が出来て来る。前の東京市長永田秀次郎氏も、今の東京市長中村是公氏も、それから電気局長の大道朝臣あそんもみんな後藤系のチャキチャキである。だから芝居とすれば、座長が後藤新平で、市会議員中の或る一派が狂言作者でなければならぬが、同じ後藤系の人物を抜きさしするのに、何でこんな芝居を打たなければならぬのであろう。
たとえば、丸の内やその他各区の各方面の往来の到る処に行われている道路工事が、下水の事を殆ど念頭に置かないでドシドシ行われていることは、どんな素人眼にもわかる。否、下水ばかりでない。少し気を付けて見ると、水道管や瓦斯ガス管、地下線、そんなものは一切お構いなしに、只上うわっ面つらだけをアスファルトや木煉瓦もくれんがで塗り埋められていることがよくわかる。
「こうやっておいて、又じきに掘り返すんだからなあ。そうして税金をドシドシかけて来るんだから、イヤンなっちまう」
という言葉は、道路工事で入り口を閉ふさがれた商店の人々が一様に云う不平である。
「何でもおれ達の任期中にやっ付けてしまえ、今度当選するかどうか分からないから」
と市会議員が相談したかどうか知らないが、こんな乱暴な工事をこう無暗むやみに進行させるところを見ると、何だかそう思われてならぬ。
この工事がちゃんと筋道の立ったもので、将来の都市計画に差支えない処だけやっているものであるかどうかということは、市民にちっとも知られていないらしい。隅田川にも、大きな橋が一つ二つ新しく架けられているようであるが、これとても同様である。
永田前市長の案か市会側の提案か知らぬが、事実から推して見ると、東京市の道路工事は、都市計画なんぞはどうでもいい、復旧も復興も構うことはない、工事だけドシドシ進行すればいいのだという風に見える。
それを東京市民はアッケラカンと立ち止まって見物しているのである。
京市という一家の家令たる市長が知らぬ間に、台所で議員と吏員がうなずき合って、すき勝手に献立てを作って、ドシドシつまみ喰いをしたり、折に詰めて持って帰ったりする。東京市の真実の主人たる市民は、そのお流れを頂戴するために高い税金を払っているということになる。これが自治制という者ならば、世の中に自治制位阿呆らしいものはないことになるのである。
この自治制のうま味を占めた市会議員連は、こうして「復旧」という御馳走や、「復興」という二の膳に満載してある御馳走がたべたくてたまらなくなった。
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昔からこんなものだろうけど、
地方の政治でこれがなかったはずがない気がする。
中にはコリント式やイオニヤ式、ドリヤ式なぞいう恐ろしく気取ったのもあるが、しかしその生地がセメント塗りで恰好だけ作ってあるので、却かえってつまらなく見える。
それよりもルネッサンス式の変化したもの、ゴシック式を今一層シツッコクしたものなぞが光っている。その中でも又一番活躍して眼を惹くのは、セセッション式以後の新様式を用いたものである。
未来派式、印象派式はもとより、何という式かわからぬが、往来に面した窓を様々の形にして色硝子ガラスと鏡をチャンポンにはめ込んだり、要りもしないバルコニを突出して白ペンキ塗りの格子を張りまわしたり、外側の壁をわざと板張りにして色ペンキで表現派模様を塗りコクッタリ、そのほか、飾り煉瓦や色の付いた壁土であらん限りの模様を工夫して、屋根の形や柱の恰好までも変化を与えている。
特別に変ったのでは、青黒いセメントで陰気な牢獄のような四角い家を作り、前にタッタ一ツ孤光燈を燭ともしている(水銀燈ではなかったとも思う)のがある。
亜剌比亜アラビア式の平べったい煉瓦積み(煉瓦は板壁にペンキで描いたもの)に、カーキー色と赤のダンダラの日除けを張りまわしているのがある。
復興ルネサンス式に支那式の色硝子の窓をはめて済ましているかと思うと、小学校のような平凡な家に北欧式の急傾斜な屋根を乗っけている……その近所に露西亜ロシア式の旧教会のような丸屋根がある……洋館に破風作りがある……と思うと、南米やアルプスあたりの絵はがきにある丸木小屋をわざわざこしらえたのもあるといったような始末……で、一面から見れば世界各国の建築様式の掃き集めと云ってよい。
ショーウインドや内部の模様はあまり管々くだくだしくなるから略するが、要するに外観と同様変化自在で、その大部分は俗悪な壁紙、色ペンキ、又はケバケバしいカアテンや鏡の応用であることは云う迄もない。
東京人は、与えられたバラック建築の自由自在な手軽い特徴を利用して、持っている限りの建築趣味を発揮した。有らん限りの智恵と工夫とを表現した。その結果がこの通りだとすると、日本人の思想もあらかたこんなものではあるまいかと考えられる。誠にハヤ恐れ入った光景である。
千変万化なバラック表現の底を流るる智恵と工夫の浅墓さ、そこに流るる一種の悲哀は、直ちに日本人のアタマの悲哀を裏書するものではあるまいか。
こうした見かけばかり恐ろしく、派手な内容の、薄ッペラなバラック町の気分に朝から晩まで涵ひたっている新しい東京人の気持ちが、そうした影響を受けずにいられぬ事は誰しも想像が付く。
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都市の景観に統一性が欠けるのが浅薄なのかな?
東京市当局の言明を聞いて見ると、電車は目下が極度の増発で、この上殖ふやせば到る処の停留所に電車の行列が出来るばかり――否、現在でもその傾きがあって困るとの事。こうなると、あとは地下線と高架線よりほかに抜け道がないとは、一般の所謂識者の観察である。
何だか知らないが、こむことこむこと。
「須田町は花の都の親知らず」
と云うが、今ではその親知らずが東京中に拡がって、とても女子供や老人と構ってはいられない。生存競争とか優勝劣敗とか、適者生存とかいう学問上の言葉を、一番手っ取り早く説明するのは電車の昇降であるが、それにしても東京のはあまり極端である。そのせいか、この頃出来た新しい車台は、車掌と運転手の居る処を交通遮断している。そうでもしなければ運転不能に陥るかも知れない。
そんならば空いた電車は一つも無いかというと、そうでもない。非常に混んでいる反対側の線は、大抵ガラ空きだから、いよいよ困る。
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これは現在でもあてはまる。
震災直後の東京ではライスカレー一皿で要求に応じた女が居たと甲たれも乙かれも云う。そのライスカレーは、玄米の飯に馬鈴薯と玉葱の汁をドロドロとまぜてカラシ粉をふりかけたもので、一杯十銭位であった。
これ以上の高等なのも居たろう。これ以下の無茶なのも居たろう。とにもかくにも震災後間もない東京の人間は、人間性の美点と醜点とを極度までさらけ出した。その醜い半面のこうした傾向が如何に烈しいものであったかという一例がこれである。
彼等東京人は食物に飢えたように性欲にも飢え渇いた。その烈しい食欲と性欲は、彼かの灰と煙の中でかようにみじめに交易された。
彼等の自制力は地震で破壊された。土煙と火煙を吹いた。
「こうなればもう何でもいい」
という投げやりの考え、六ヶむずかしく云えば彼等は悪魔の標語を徹底的に味わった。
「必要の前に善悪無し」
最近の東京では、性病又は性病予防等に関する秘密薬の売れ行きが盛である。Y書(学生語)出版も同時に大流行である。これ等の売薬や書籍は白昼堂々と店頭に曝さらされている。いずれも数年以前はその筋のお許しが出なかったものばかりである。
これと同様に秘密の石版画、秘密のP・O・P、秘密の謄写版刷は、東京の暗やみから暗やみへ、恰あたかも独逸ドイツの紙幣のように波を打ちまわっている。その価格も震災前の半分内外だという。
このような商売をするものは、震災後、その筋の調しらべの行届かぬのに乗じて非常に沢山出来たらしく、その商品は一時東京市中に生産過剰を来たした。一方に、被服廠その他の死体写真の秘密売買で呼吸を覚えた連中は、引続いてこの商売を引き受けたと伝えられる。
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第二次大戦直後にもこんな話あったね。
自分の高尚な絵が売れぬ。売れても絵の具代に追っつかぬ。一方に秘密画さえ描けば、粗末なものでも非常に高価たかく早く売れるという事実は、不断に在京の画家を誘惑している。
文展や院展に出す絵のモデル代、旅行費、絵の具代、間借り代、その他の生活費は、つまらぬ絵を二三十枚描く辛棒さえあれば訳なく取れる。そのためには仲買人も居れば、モデルも居る。只、いつも浮世絵風の線で(無論ゴマカシでよい)描かなければならぬのが、洋画家なぞにとっては困るといえば困る位のものである。
このような絵の直接御用命者には然さる○○な方々もある。西洋人もある。間接の手を経て外国へも続々行くらしい。某ホテルのボーイ頭なぞはその仲介に立って大金を蓄ためていると聞く。
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帝銀事件の被告人・死刑囚も、生活のために春画を描いていたな。
切ったフイルムを国別にして見ると、
検閲巻数 同上呎数 切除呎数
日本物 七、九五四 六、九一七、三二一 三六、四三四
米国物 七、六九六 六、八一〇、五六三 一九、三三六
欧州物 九一三 八三二、七四八 三、七〇〇
合計 一六、五六三 一四、五六〇、六三二 五九、四七〇
となる。即ち割合から見て日本映画は欧州物よりも二三割方多く切られているし、米国物に比べると殆ど二倍近く切られている。
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欧米の映画の上映数の方が多かったんだな
私は、友達の処に在る雑誌の中で、偶然に乱歩氏の「心理試験」を読んだのですが、興味に釣られて一気に読まされたにも拘かかわらず、その内容に対しては、一種の失望を禁じ得ませんでした。
「日本人は直ぐに西洋人の真似をするのだナ」
と思いながら「エドガー、アラン、ポー」「エドガワ、ランポ」と心の中で繰り返して、何とも云えない物足りなさを感じた事を、今でもハッキリと記憶しています。
それから矢張り同氏の作にかかる「D坂の殺人」「二銭銅貨」なぞを、作者の力に引き付けられて次から次に読みは読みながら、構想や行文の苦心が一つ残らず西洋人の模倣に見えて仕様がありませんでしたので、巻を蔽おおうと同時に、二度と読む気がしなくなったものでした。そうして、
「江戸川乱歩は要するにエドガア、アラン、ポーに対するエドガワ、ランポに過すぎないのかナ」
なぞと思い思いした事でした。
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実際、乱歩のトリックって、洋物の模倣ばかりだよな。
ところが、私のこうした乱歩氏に対する失望感は、同氏の「白昼夢」を読むと同時に、あとかたもなく引っくり返ってしまったのでした。
私はズット前に或る処で、改葬に立ち会った事がありますが、その時に出て来た屍体の白い腐肉、褐色の血? 死水に浮く脂肪? のかがやき、太陽の黄色い臭気なぞ……それは今思い出してもウンザリして唾を吐きたくなる位ですが、そうした太陽の下のタマラナイ感じの数々を、私はソックリそのまま「白昼夢」の中に発見したのです。しかも、私にとっては一カタマリの不快感に過ぎないそのような印象を乱歩氏は細かに、やわらかに分解し、象徴化し、詩化し、小説化し得る人である事を、私はふるえ上るほど、うなずかせられたのです。
……白昼の人通りの中で、天日に顔を晒さらしながら、ダラシなく涙を流す中年男……うす暗いところで開け放しにされている水道の栓……ドラッグの人形の奇妙な形と光り……その中に交まじった生うぶ毛だらけの実物標本……そのようなものが力なくつながり合い、重なり合いながら描き出す白昼夢の交響楽……事実以上のこころの真実……虚偽以上の自然の虚偽……その純な、日本風な、ヤルセのない魅力に、私はスッカリ強直させられてしまいました。
……日本でもコンナ小説が生み出され得るのか……この種の小説で純日本式の気分を取り扱ったものとしては谷崎潤一郎のものを読んだ記憶があるだけであるが、これは又、全然、別世界を作った純真、純美なものではないか……と思うと、感激とも感謝とも形容の出来ない、タマラナイ読後感に囚われて、眼を大きく大きく見開きながら、いつまでもいつまでも同じクラ闇を凝視させられた事でした。
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昭和初期独特のエログロ怪奇趣味ね。
夢野先生も影響受けてますね。
乱歩も、早大卒業後、貿易会社社員を皮切りに、
ラーメン屋、古本屋など職を転々としたんだよな。
悟りとか政治には無縁だったけど。
妻に対する態度は結構戦後に近いよな
夏目漱石のような暴力的なところもない
>仕事に対する好き嫌いを全然云わない修業をさせられました
それまであれだけプレッシャーと人生遍歴あっても、
そういうのは治ってなかったのか
素晴らしい紹介作品をどうも有難うございます。
梅津翁に関する夢野氏の文章を知って読むことが出来ただけでも感謝の念が湧いて参ります。
杉山家の思想を時代錯誤と呼ぶ人こそがまさに時代の潮流に乗っかる軽薄児ですね。
物事の本質を見極め、物事の底の底まで透視徹見すれば、彼らが実に正しいことをズバリと言い当てていたことが自ずと得心されます。
こんな感じの文豪の一生を学ぶ系って他にもあります?
あったら教えて頂きたいですが…
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